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三章『ギア編』

第260話 スターライト15

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 私は逃げる。広場は戦場と化している。
 空から降り注ぐ無数の岩石鬼(ロックオーガ)。それを地上の聖騎士たちが様々な魔法で迎え撃っている。

 岩石鬼(ロックオーガ)は魔法に弱い。落下に合わせて上手く魔法を当てれば一撃で倒すことも可能だ。

 だが数が多い。どうしても着地を許してしまう。
 そこからは白兵戦。魔法という明確な弱点があるとはいえ岩石鬼(ロックオーガ)はAクラスの魔物。聖騎士の剣を受けても平然と戦い続けている。

「剣に属性付加魔法(エンチャントマジック)をかけろ!」

 聖騎士たちの大声が聞こえる、大隊長はロイしかいないと思うけど、指示を出せる隊長格は何人もいるのだろう。


 ズキズキと痛む両腕に治癒魔法をかけるのも忘れて、私は走り続ける。

 とにかく逃げ出したかった。こんな場所からは一刻も早く離れたい。




「どこに行こうというのかしら?」




 現れたのは南瓜の魔物。うねうねと動く根っこが足の役割を果たしている。高速で動き私の前までくるとピタリと止まる。

 魔物から聞こえた声にしてはやけに品がある、どういうこと?  その疑問はすぐに解消される。南瓜の一部が開き中からピンク髪の女が現れる。

「御機嫌よう、青髪のお嬢さん。もう一度訪ねますわ、どちらに向かおうとしているのかしら?」

 女は髪をかきあげて、優雅な足取りで私の前まで来る、そしてしゃがみこんで目線を合わせてくる。

「乗せてあげるわ、こんな戦場からは早く抜け出して私の屋敷にいらっしゃいな」

 ピンク髪の女の目が光る。かきあげられた髪からいい匂いがする。私の意識は徐々に鈍って・・・・・・いく。か、かんがえられな、い?

「お茶会を開こうと思うの、理由はそうね、新しい友達の歓迎会。美味しい紅茶もいれてあげるわ、ここでの悲惨な体験談を聞かせてちょうだい」

 ピンク髪の女が舌なめずりをする。あれ、わからない、あ、手を引かれている、ついていって、いいの? わからな、い、あ、あ、あ、た、すけ、


「世界(ドワール)を滅(メッツ)ぼす星殺(ゴロスター)し・・・・・・」


 背後から聞こえる聞いたこともない言葉。振り返るとルフレオが立っている。

 ピンク髪の女は私を突き飛ばして距離をとる。一連の動作がとてつもなく速い、少なくとも人の動きではない。

 気づけば意志がハッキリしている。ルフレオは吹き飛ばされた私を支えている。老人なのにガッチリしている。

「どうして貴方がここにいるのかしら? 御老公」

 ルフレオは呪文(なのか分からない)の詠唱を途中でやめて、にこやかな笑みを見せる。

「ほっほ、ワシのことを覚えとるやつがおるとはのぉ、出会った敵は片っ端からくびり殺すように心がけておるのじゃが」
「まだボケてるわけじゃないでしょう?  己の世界の小ささを知りなさい」
「ほっほっほ、相も変わらず世界は広いのぉ」

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