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三章『ギア編』
第244話 建設期
しおりを挟むチョウホウ街が拡大している。
地図が正しければあそこはまだ鋭利な山が連なる山岳地帯のはずだ。
「地図を書き換えないといけないわね」
「その地図も古いでござるからな」
「そういう問題じゃないんじゃなくって?」
呑気に話しているアリス様とブラギリオン。俺は近づく街を眺めながら考える。俺が思い出すのは魔王が話していた神の話だ。
「『創造神』ビルディーか」
この神は現在『建設期』に突入しているらしい。だがまさか1人でここまでやれるのか?
俺のつぶやきを聞いたブラギリオンがなるほどと頷いた。
「ああビルディー様がいるのでしたな。ならば納得でござる」
「あれを1人でやったって言うのかよ」
「いかにも」
まさしく神業ってやつか。けっ、工場建てんのに四苦八苦してた俺が馬鹿らしくなってくる。
「神の所業でござるゆえ、我々はあれを自然の理と捉えるしかないでござるよ」
神ってのは災害みたいなもんか。こりゃ戦いも長引くわけだ。
近づく街を見て、俺たちはさらに困惑する。
「横に広いのは当たり前だが、縦にもなげぇぞこれ」
そう、連なる建物すべてが、現代の頃に見た高層マンションよりも大きいのだ。
「そのうえ入り組んでいるわね」
端から機能性なんて考えてないのか、車が絶対に通れないような道とか(道と呼んでいいのかは微妙だ)、建物と建物を繋ぐ太いパイプやらがまるで密集した植物のように建てられている。
「おい、この馬車じゃ通れそうもねぇぞ」
「今までの旅を見ていなかったのかしら、障害物なんて南瓜(パンプキン)の(キャリッジ)には無いも同然よ」
馬車が建物に突っ込む。壁に激突しても勢いは死なず、速度も落とさないまま走り続けている(馬車内部はほとんど揺れていない)。
「ふむ、着いたはいいでござるが、これではディザスター氏を探すこともままならないでござるな」
「そうね、それについては今方法を考えているところよ」
「GPSとかねぇのか」
「じーぴーえす? 何かしらそれは」
「要は相手の場所が分かる道具とか魔法とかだ」
「うーん、魔力探知ならできるけれど、こうも広いとどうかしらね」
「魔力感知でござるか、いい考えでござる。魔力感知は拙者が試みるゆえ、他の方法も考えていてほしいでござる」
「ブラギリオンのほうがそういったのは得意だものね。お願いするわ」
「任されよ」
九大天王同士、なんだかんだ言って信頼関係は厚いようだな。
「じゃあ、魔力感知はブラギリオンに任せるとして、私たちもディザスターもといディザスターの指揮する軍を探しましょう」
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