上 下
232 / 1,167
三章『ギア編』

第232話 忠義のある魔物は死んだ魔物です

しおりを挟む

 魔王城はやたらでかい。生前の記憶でもこれに該当するものがねぇと言えるほどにでかい(単純に俺の知識不足もあるかもしれねぇ)。

 一つの街をそのまま城にしたような、そんな荒唐無稽な巨大さを誇る城はさらに要塞のような城下町に囲まれている(工場建設の際、城下町の下にトンネルを通すのが最大の難所だった)。

 ガヤガヤと賑わう街、国民に人形(ひとがた)はいれど人間はおらず、ここで暮らしているのはみんな、多種多様な人間以外の知的生命体どもだ。

 でだ、なんで俺がこんなところをほっつき歩いてるかっていうと、『ここにブラギリオンがいる』と魔王に教えられた場所がこの街の中にあるからだ。

「こうして見ると本当に人がいないんですね」
「おい、なんでついてきた」

 俺の横にいるのはレイだ、物珍しそうに周りを見ている(周りの奴らも俺らを見ている、俺らっつーか亜人とはいえ人に分類されるレイをだが)

「これも見聞を広めるためですよ」
「結構通ったことあるだろうが」
「いつも大勢の魔物たちと一緒だったし、仕事中に周りなんて見ている暇ありませんでしたよ」
「今も仕事中だぞコラ」
「じゃあそうですね、ブラギリオン様についてでもお話しましょうか」
「おう聞かせろ」
「相変わらずの切り替えの早さですね。はい、まず、ブラギリオン様は旧魔王がこの地を支配していたころからの古株だそうです」
「シチューと『同じ』ってことか」
「はい、それどころか役職も同じだったようです」
「ブラギリオンは元四天王か」
「はい」
「『魔獣』のシチューに『オタク』のブラギリオン、他に今の魔王軍に元四天王はいるのか?」
「いますよ、旧四天王では『魔術』のパロムがそうです。ってブラギリオン様の『オタク』は自他共に認める事実ではありますけど、本当の二つ名は『魔剣』のブラギリオン様です」
「ふうん、で、あと1人はどうした? 四天王ってことは4人いるだろ?」
「はい『魔女』のスカリーチェですね、彼女は最後まで旧魔王と共に魔王様と戦った方らしいです。その後の消息は不明となっています、その時の戦いで戦死したとも言われていますけど、詳しいことはよく分かりません」
「だいたい旧魔王軍は取り込まれた形になったのか」

 『魔獣』『魔術』『魔剣』『魔女』、そして『魔王』か。
 昔のほうがシンプルでわかりやすいな。

「魔物は実力主義ですからね、忠義のある魔物は死んだ魔物です。あ、ブラギリオン様のいるお店が見えてきました」

 地図を片手にレイは一軒の店を指した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

欲しいのならば、全部あげましょう

杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」 今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。 「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」 それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど? 「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」 とお父様。 「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」 とお義母様。 「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」 と専属侍女。 この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。 挙げ句の果てに。 「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」 妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。 そうですか。 欲しいのならば、あげましょう。 ですがもう、こちらも遠慮しませんよ? ◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。 「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。 恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。 一発ネタですが後悔はありません。 テンプレ詰め合わせですがよろしければ。 ◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。 カクヨムでも公開しました。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...