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三章『ギア編』
第232話 忠義のある魔物は死んだ魔物です
しおりを挟む魔王城はやたらでかい。生前の記憶でもこれに該当するものがねぇと言えるほどにでかい(単純に俺の知識不足もあるかもしれねぇ)。
一つの街をそのまま城にしたような、そんな荒唐無稽な巨大さを誇る城はさらに要塞のような城下町に囲まれている(工場建設の際、城下町の下にトンネルを通すのが最大の難所だった)。
ガヤガヤと賑わう街、国民に人形(ひとがた)はいれど人間はおらず、ここで暮らしているのはみんな、多種多様な人間以外の知的生命体どもだ。
でだ、なんで俺がこんなところをほっつき歩いてるかっていうと、『ここにブラギリオンがいる』と魔王に教えられた場所がこの街の中にあるからだ。
「こうして見ると本当に人がいないんですね」
「おい、なんでついてきた」
俺の横にいるのはレイだ、物珍しそうに周りを見ている(周りの奴らも俺らを見ている、俺らっつーか亜人とはいえ人に分類されるレイをだが)
「これも見聞を広めるためですよ」
「結構通ったことあるだろうが」
「いつも大勢の魔物たちと一緒だったし、仕事中に周りなんて見ている暇ありませんでしたよ」
「今も仕事中だぞコラ」
「じゃあそうですね、ブラギリオン様についてでもお話しましょうか」
「おう聞かせろ」
「相変わらずの切り替えの早さですね。はい、まず、ブラギリオン様は旧魔王がこの地を支配していたころからの古株だそうです」
「シチューと『同じ』ってことか」
「はい、それどころか役職も同じだったようです」
「ブラギリオンは元四天王か」
「はい」
「『魔獣』のシチューに『オタク』のブラギリオン、他に今の魔王軍に元四天王はいるのか?」
「いますよ、旧四天王では『魔術』のパロムがそうです。ってブラギリオン様の『オタク』は自他共に認める事実ではありますけど、本当の二つ名は『魔剣』のブラギリオン様です」
「ふうん、で、あと1人はどうした? 四天王ってことは4人いるだろ?」
「はい『魔女』のスカリーチェですね、彼女は最後まで旧魔王と共に魔王様と戦った方らしいです。その後の消息は不明となっています、その時の戦いで戦死したとも言われていますけど、詳しいことはよく分かりません」
「だいたい旧魔王軍は取り込まれた形になったのか」
『魔獣』『魔術』『魔剣』『魔女』、そして『魔王』か。
昔のほうがシンプルでわかりやすいな。
「魔物は実力主義ですからね、忠義のある魔物は死んだ魔物です。あ、ブラギリオン様のいるお店が見えてきました」
地図を片手にレイは一軒の店を指した。
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