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三章『ギア編』

第197話 完璧なプランニング

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 計画表作りは難航していた(メモは大量に書いた)。

 当たり前のことだ、まだ『犬小屋』を取り戻しただけだ。魔鉱石が採掘されて、それが素材として使えるようになるのに時間がかかる。

 それにその加工場にしても運用方法にしてもまだなにも進展しちゃいねぇ。
魔王だって「まぁ取り返せるなら取り返そうか」くらいにしか思っちゃいないんだろう。

 やる気あんのかこいつら。

 まず問題なのが、俺にはなんの権力もねぇってことだ。
 絶者候補だから、親衛隊をつけたり、それなりの恩恵こそ受けたが、実際の権限は無いに等しい。

 俺1人じゃ軍も動かせねぇし、労働力の確保もできねぇ。
 教室に通わせているところをみるに、魔王どもは俺を学生か何かと思ってやがる。

 しっかり育成しようとする姿勢は認めるが、俺は人生2周目なんだよ。それに勇者がどれほど強いかが分からねぇ以上、チンタラしてる場合でもねぇ。

 俺が微動だにしないで机に向かっていると、レイが後ろから話しかけてきた。

「何を考えているんですか?」
「考え事だ」
「考え事ですか」
「そうだ。やることが多すぎる」
「ちょっとそれ見せてください」
「あん?」

 なんだパロムに情報を送ろうってわけか。まぁ構わねぇが。

 レイにメモを手渡すと、どんどん目を通していく。ページをめくるのがやたら早いな。斜め読みしてんじゃねぇだろうな。

 数分で読み終わると(小説ほどには書いてねぇが、これだけ早く読破されるとは思わなかった)、レイはふぅと一息ついて俺に向き直る。

「これくらいならまとめられそうです」
「なに、できるのか?」
「はい」

 まさか、嘘だろ。

「あ、信じてませんね。前は姉さんの手伝いをしていて、こういう秘書的な仕事は私が全部やってたんですよ」
「そうか、ならやってみろ」
「はーい」

 えらく協力的だな。そりゃそうか、早く勇者を殺して、その姉さって奴のところに帰りてぇんだもんな。

 レイは1時間も経たないうちに俺のメモをまとめる。
 俺よりレイの方がここにいて長いんだ、知ってることも俺より多いのは当たり前か。

「できました」
「どれ」

 俺はレイの作った表を見る。隅々まで確認して、レイに向き直る。

「いい仕事だ」
「ありがとうございます!」

 施設の建設に最適な人材のピックアップ。
 建設に伴う資材の計算。
 俺の考えた魔王軍強化の具体案を効率よくまとめてもある。
 各種の所要時間もどこから計算したか知らねぇが書いてある。

 完璧なプランニングだ。これ通りになるなら勇者抹殺もだだの作業と化すだろう。

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