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三章『ギア編』

第192話 セギュラ・バーミリオン1

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 キラーのボディは実に快適だ。
 人間の頃の形状と近いためか操作しやすい。

「こんな事ができるのか」
「できる可能性があっただけポメ」

 俺は体を動かす、飛んだり跳ねたり、ラジオ体操の動きをする。

「原理としては魔力を全身に巡らせて操作しているポメ。魔力総量の多いギアならキラー程度の大きさも余裕で動かせるポメ」

 魔力で動かすか、プロトタイプの時は意識していなかったが、形状が複雑になった分、意識しやすくなっているな。

 ほう、魔力を神経のように巡らせるのか。・・・・・・やはり体が大きくなるにつれて魔力消費量が増えるなこれは。

「これいいな」
「『犬小屋』が使えない時に集めた鉱石の中でも最高の物を使ったポメ」

 ならばと、欲が出てくるな。

「魔鉱石ならもっと凄くなるのか?」
「もちろんポメ。ボディのスペックだけでもSクラスは確実ポメ、あとは流す魔力量によるポメ」

 Sクラスか、このキラーのボディがAクラスだったな。

「なるほど、こりゃ試運転が必要だな、おいレイ」
「あ、はい」
「セギュラとタイマンするぞ」





 その日の夕方、俺とレイは魔王城内にある広場にいた。
 この広場はかなり広い、東京〇ーム何個分だ?

 テニスコートのように地面に白い線が引かれている。模擬戦とかそういう使用用途で用意されているらしいな。タイマンするには打って付けの場所だ。

「ほんとにやるんですか、タイマン」
「ああ」
「どうしてですか? セギュラはもうギアの仲間なのに」
「どうにも腑に落ちねぇからな、この体なら負けることはねぇだろうし、正々堂々と公の場でフルボッコにしてやれば俺も納得できる」
「そんなぁ」

 ポラニアは両者共々ウィン・ウィンの関係を築けているから問題ねぁがセギュラはダメだ、俺には理解できない理論を使ってきやがるからな。

 だから、俺でも分かる、強いやつに従うって理論をセギュラに押し付ける。弱肉強食は奴も知っているだろう。

「ギア、先に来ていたのか」

 セギュラが現れた。メアもいるな。

「おいメア、なんでテメェがついてきてんだよ」
「う、うるさいわね、ぶち殺すわよ!」
「あん? テメェから花壇に植えるぞ」
「だれが可憐なチューリップよ!」
「そこまでは言ってねぇ」

 メアの相手はその位にして、セギュラの奴はいつにも増して精悍な顔つきをしてやがる。

 俺が見ているとセギュラが口を開いた。

「その姿、教室でも見たがキラーの体を手に入れたと言っていたな」
「そうだ」

 ハッとなったメアがその言葉に噛み付いてくる。

「昨日までチンチクリンだったのにー!」
「ちょっと黙ってろ」
「なによ! 子供扱いしないでくれる!」

 その瞬間、ガツンと硬いもので地面を突く音が響く。メアはビクッと肩を揺らして振り返る、セギュラが剣を地面に突き立て睨みをきかせている。

「メア、今は静かにしておいてくれないか、付き添いは渋々承諾したが、こう騒がれてはかなわん」
「わ、わかったわよ、悪かったわ」

 メアは一歩また一歩と下がっていく。レイもそれとなく俺から離れている。四角く囲われた白線の中には俺とセギュラしかいない。

「ギア」
「あん?」
「やるまえにひとつ聞いていいか?」
「後生だ、聞いてやる」
「なぜ私だけセギュラのまま略さずに呼んでいるんだ?」

 試合のルールとかの確認じゃねぇのかよ。
 簡単な話だ。

「セギュだと語呂が悪いからな」
「それだけの理由か」
「そうだ、聞き間違いされた方が時間がかかるからな。明確に分かるセギュラの方を選んだまでだ」
「······セラ」
「あん?」
「私が勝ったらセラと呼んでもらうぞ」

 それくらい今からでも変えてやるが、奴が商談のテーブルに乗せたんだ、こっちから見たら石ころでも向こうから見たらダイヤなんだろう。

「ついでに私の部下になってもらうぞ」

 ついでかよ。

「2つもか」
「ダメか?」
「いや。なら俺も2つだ」
「構わん、なんでも言ってくれ」
「俺の部下になれ」
「それは元からなのだが、まぁいい、あと1つは?」
「お前の持っている親衛隊を俺に寄越せ」


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