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三章『ギア編』
第182話 チワワクエスト7
しおりを挟むシングルタスクからマルチタスクに思考を切り替える。
敵意は向けない、仕事のことのみを考える。
頭がクリアになっていく、パソコンを起動した時のような、世界が広がっていく感覚だ。
俺は同時に思考する。
今の俺たちでは手に負えねぇ、援軍が必要だ。幸い1000頭の魔物がこの『犬小屋』にはいる。
紫猪(パープルボア)が応援を呼びに行ってはいるが、それを待ってくれるほどチワワは甘くねぇ。
別の方法を考えなければ。
レイは腰を抜かしてその場にへたり込んでいる。その表情は仕事に潰される新人の顔だ。
レイに戦うように命令はできねぇ、確実にダルマにされる。無駄に兵を失うだけだ。
チワワはなぜ腕からちぎった? 頭も腕と大差なく引きちぎって見せた、最初から急所と思わしき頭をなぜ狙わなかった? 実に非効率的だ。
ああ、なるほど、あれが残虐ってやつだな。あの犬は魔獣だから人間をなぶるんだ。くく、理解した、魔物は人をなぶるんだな。なら好都合だ。
だってよ、周りにいる1000の兵士は漏れなく、
魔物なんだからよ。
作戦は決まった、俺は何もしねぇ。
さぁ魔獣の怖さを俺に教えてくれよ。
「い、いや」
「はるるぅ」
案の定、チワワの次の目標はレイだ。
「や、やめて」
「わう!」
チワワの姿がブレる。同時にレイが10mほど吹き飛ぶ、体当たりか。チワワの様子を見るにあれでも軽く小突いたって感じか。
痛いと人は叫ぶ、もちろん訓練された軍人とかなら話は別だが、レイなら、洗脳を一部解除して感情を表に出せる年頃の女ならば、
「きゃああーーっ!!」
叫ぶ、なかなかの音量、何デシベルだ、やってくれる、いい仕事だ。
周りが騒がしくなる、ざわざわって感じだ、あっという間に俺たちを取り囲む影。次々に集結する魔物ども、1000の魔物どもだ。
これならどうだ?
チワワの表情は以前不適のまま、へでもないってか。
俺は倒れたまま魔物に命令を下す。
「やれ! 魔獣チワワを始末しろ!」
魔物どもの雄叫び、開戦の合図だ。山を滑り降り、岩肌を駆け上がり、魔獣チワワに何千倍もの質量が襲いかかる。
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