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三章『ギア編』
第181話 チワワクエスト6
しおりを挟む目の前にいる魔獣とやらは、どう見てもチワワにしかみえねぇ。
五歳児体型の俺より背が低い犬、チワワ、本当にこんなのが九大天王の一角なのか?
「ぺっ」
「あん?」
俺はチワワが吐き出した赤黒いものを見る。
「ひっ」
レイは短い悲鳴をあげる。
「おいレイ、なんだあれは?」
「お······」
「お? なんだ?」
「おめめです」
「目玉か」
ちぃ、食事中だったか。
「お、おめめですよ!? おめめ! 目玉! 眼球!」
「んだよ、知ってるっての」
「こ、怖くないんですか?」
「あぁ? 怖いってなんだ?」
「恐怖を知らないんですか?」
何言ってんだこいつ。
「舐めてんのか、知ってるに決まってんだろ」
「知ってるのと、感じないっていうのは全くの別物だと思うんですけど」
「はぁ?」
わけわかんねぇ。
「人でなし、です」
「人じゃねぇからな」
とか、恐怖についてとか哲学的な事を話していると、いつの間にかチワワが近づいていた。
俺に向かって背を向けて片方の後ろ足をあげる。そしてち〇こから黄色い液体が
「お······」
「今度はなんだ」
「オシッコです」
「俺は電信柱か」
「でんしん?」
「ちぃ、何でもねぇ」
このチワワ、俺たちを敵として見ていねぇ。それどころかオブジェの一つとでも言わんばかりに俺に小便ひっかけやがった。
つまりこいつは油断している。不意をつくことができる。
俺が不意をつく算段を考え始めようとした時、今まで聞いたことのない音が聞こえた。なんだ今の音はとても近いぞ、何か硬いものがひしゃげたような、
「ギア!」
「あん?」
ああ、俺の右腕をチワワが咥えてやがる、そうか引きちぎられたのか、
だがどうして、敵意を向けたからか?
すると左腕も無くなっていた、いやチワワが咥えている。また千切られたのか。俺は立ったままチワワを見続ける。
俺の目じゃ、チワワの動きに反応できねぇ、つまり逃走することは不可能。ならば闘争するしかねぇ。
「んぁ?」
俺の視線が一段低くなる。
チワワはキラープロトタイプの頭を咥えている。
今度は頭を引きちぎられたのか、それで意識か胸にはめ込まれている歯車に戻ったと、
ここからは慎重に敵意は封印する。
これで俺を殺したと思わせることはできるんじゃねぇか?
獣なら頭を取れば確実に殺せると思っていても不思議ではねぇからな。
俺はその場に倒れた。
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