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三章『ギア編』
第180話 チワワクエスト5
しおりを挟む草木が一本もない茶褐色の岩肌を持つ山々のふもと、ここからが採掘場『犬小屋』だ。
レトロな採掘場だな。レールが洞窟に続いている、トロッコで魔鉱石を運搬していたのか、だがそれも錆び付いちまってる、設備も整えなきゃならねぇな。
この山のどこかに魔獣チワワがいる。
見つかるのも時間の問題だろう、1000頭の魔物が隈無く探しているんだからな。
俺が魔物たちの様子を観察していると、紫色の猪みてぇな魔物が走り寄ってくる。
「なんだこいつは」
隣にいるレイが答えた。
「紫猪(パープルボア)ですね、どうやら魔獣チワワについて何か言いたいことがあるようです」
「言葉は話せねぇのか」
「賢いですが上手く発音ができませんので、ついて行ってはどうでしょうか?」
「そうだな」
俺とレイは紫猪(パープルボア)の後をついていく。岩の影に何かある。これは······。
「糞か」
「ウンチですね」
「魔獣チワワの糞ってことか?」
「そのようですね、かなり小さなウンチですので間違いないかと」
俺は転がっている石を掴んで糞をつつく。まだ乾燥していねぇところをみるに、この糞はまだ新しいものだ。
この近くに魔獣チワワがいる、俺は辺りを見渡す。
鉱山の端っこに比較的小さな洞窟を発見する。
「おい、あの洞窟は見たか?」
「いえ」
「レールが通ってねぇな、他のはレールをしいているのによ、あそこだけレールが通ってねぇ」
「言われてみれば確かに妙ですね」
レイは魔鉱山の地図を取り出して確認する。
「やっぱり無いです、あの穴は地図にはありません」
「そうか、あそこが魔獣チワワの巣だな」
よく見ればこの穴の至る所に爪痕がある。まさか掘ったのか、この鉱山の岩肌を、
「おい猪、兵を集めろ、魔獣チワワの住処(いどころ)を見つけたと兵隊どもに知らせてこい」
「ぴぎ!」
紫猪(パープルボア)は短く鳴くと駆け出していった。
「順調ですね」
「馬鹿言え、まだ住んでるかもしれねぇ巣穴を見つけただけじゃねぇか」
「ですが、こうなれば、巣穴を取り囲んで消耗戦にも」
「待て」
「え?」
何か聞こえる、これは唸り声、甲高い犬の唸り声だ。
音の発信源は小さな洞窟の中からだ。
「ぐるるるるるる」
チワワだ、この世界に来て初めて親近感のわくものにであった。俺犬飼った事ねぇけどよ。
「ヴァアンッ!!」
鳴いたのか? 大気が震えている。レイは痛そうに耳を塞いでいる。この程度の音で何をひるんでやがる。
魔獣チワワはレイの様子を見て、鼻を鳴らして軽快に歩き出す。
九大天王の一角、魔獣チワワが俺の目の前にいる。
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