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三章『ギア編』

第160話 夜は長い、3分も時間を割いてやる

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「放せ、揺らすな」
「す、すいません! 助けてください!」
「おう、考えてやる」
「あ、ありがとうございます!」
「だからまずレイの素性を教えろ」
「レイ······それは私の名前ですか?」
「そうだ、お前の名前だ、長いから短くした」
「で、ですが、私の名前は両親からもらった」
「めんどくせぇな、自由になったら家族と好きなだけフルネームで呼び合えよ」
「す、すいません!」
「経緯を話せ、わかりやすく短く話せ」

 俺の肩から手を離したレイは一歩下がる。表情は暗いまま話し始める。

「えっと、私は魔王軍に攫われてここに連れてこられました」
「それで」
「ダークエルフは珍しいので、殺されずに洗脳されて今に至ります」
「うん、それなりに短くていいぞ。気に入った」
「ありがとうございます。あ、あの、私には姉がいて、姉の元に帰りたいんです」
「そんなことは聞いてねぇが、なんだ親はどうした?」
「魔王軍に攻められた時に、姉以外の家族は皆······」
「口ごもるなよ、殺されたのか?」
「はい」
「そうかそれは災難だったな」
「棒読みですね」
「棒読みになってたか、悪かったな」
「この悲しみが分からないんですか?」
「ああ」
「ああって······家族を失えば貴方だって」
「······貴方、じゃねぇ、ギアだ敬称は要らねぇ。まさか洗脳されている間の記憶はないのか?」
「はい、ぼんやりしていてほとんど覚えていません」
「そうか、少し考えさせろ」
「は、はい」

 これは洗脳したままの方が良さそうだ、目を離した隙に逃げるだろう。俺ならそうする。

「洗脳したままにする」
「え!?」
「姉の元には返さない、死ぬまで働いてもらう」
「や、か、帰りたいんです!」
「バカがそれがダメだ、逃げるだろうが」
「に、逃げません! 逃げませんから!」
「口ではなんとでも言えるんだよ、確証がねぇ限りは今すぐに洗脳し直して死ぬまで洗脳は解かねぇ」
「そんな······あんまり、です」

 とはいっても、レイのポテンシャルが分からねぇ以上、チャンスを与えるべきか、夜は長いからな。

「最後のチャンスだ、『洗脳していない方が利用価値のある人物』だと俺を説得させてみせろ、3分で」
「たったの3分ですか!?」
「ああ、夜は長い、3分も時間を割いてやる。いいな?」
「わ、わかりました!」

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