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三章『ギア編』
第151話 レイラ・クラヴィッツ
しおりを挟む玉座の間から出た俺にホネルトンが話かけた。
「ふぅ、魔王様が寛大な方でなかったら、いまごろ私たちは肉片も残らずに消されていましたよ」
もともと骨しか残ってないだろ。なんてツッコンでる時間はねぇ。
上手いこと魔王に話をそらされちまった。また次に会った時に資金や物資の話をしよう。
と、一つ損失を出しちまったな。
「ホネルトン、その腕は治るのか?」
「治ります」
「なら早く治せ」
「なりません。魔王様がお与えになった罰なのですから。魔王様の許しが出るまで治すことは許されません」
けっ、見てないところなら構わねぇだろうが、不便で仕方ねぇだろ。
「俺を他の絶者候補のところに連れていけ」
「いずれは挨拶をしにいきますが、今はまだやることが残っています」
「なんだ? 書類にサインでもするのか?」
「いえ、ギアの下僕を1人用意しました」
「下僕だと?」
「厳密には絶者の親衛隊、ギアにはまだ1人しかつけられませんが、魔王様から信頼を勝ち取れば自ずと増えることでしょう」
「ホネルトンじゃダメなのか?」
「私は九大天王、やることが沢山ありますからね。でも安心してください、彼女は魔王軍の中でもトップクラスの実力者ですから」
はん、エリートか、なら話は早そうだ。
「ここがギアの部屋になります。自由に使ってください」
ホネルトンが部屋という空間は、部屋と言うにはあまりにも広い。なんともロイヤルな部屋だ、まぁ部屋は広いに越したことはねぇ。文句はない。
と、部屋の奥に誰かいやがるな。まさか同居人がいるのか? ならば上下関係をしっかりしておかねぇとな。ぶち殺してやる。
「おい、そこのお前、誰だ?」
「ああ、彼女こそ、ギアの親衛隊ですよ。もう一度言いますが、現在ギアにつけられる親衛隊は1人と決まっています。大切にしてくださいね」
「······」
部屋の隅で立っているのは、褐色の女だ、髪の色は銀色、脱色しているのか? いや、この世界のヤツらの髪色はまだよく分からないからな。ん? なんだあの耳はとんがってやがる。それに右目に眼帯だと、PCの画面ちゃんと見れんのか?
「ダークエルフは初めて見ますか?」
「おう、説明しろ」
「ダークエルフとは呪いに長けた亜人です」
「なるほど分かった」
「まだ説明が」
「いらん。こいつから直に聞いたほうが早い。おい、ダークエルフ、名前を教えろ」
「······」
「無視か? 上等だコラ、上下関係はハッキリさせとかねぇと気がすまねぇぞ」
その様子を見たホネルトンがダークエルフに近づく。
「ああ、そうでした、まだギアを主人と登録していませんでした」
「あん? 主人だと? どういうことだ」
「彼女は洗脳してあるのです」
洗脳、そういうものもあるのか。
「薬漬けにしたのか?」
「いえ、九大天王の1人、パロムという科学者が魔法で洗脳しました」
魔法ね、関係の無いことだと思って疑問にも思わなかったが、ここは異世界だったな。魔法とかいうインチキくせぇ代物がまかり通ってる世界だ。
「なら、さっさと主人登録を済ませろ」
「分かりました」
ホネルトンがダークエルフの頭に左手を添えて魔法を唱える。
「洗脳操作(ブレインウォッシングオペレーション)」
ダークエルフが僅かに震える。
「終わりました、ギアを主人として認識するようになりましたよ」
ホネルトンが手を離すと、ダークエルフは俺の方を向く。
「ご主人様、なんなりとお申し付け下さい」
「ご主人様というな、文字数も多くて効率が悪い。ギアと呼べ」
「はい、ギア様」
「様もいらねぇ」
「かしこまりました、ギア」
「それで名前はなんて言うんだ?」
「レイラ・クラヴィッツ」
「長いレイでいいな」
「仰せのままに」
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