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一章『レタス編』

第8話 被食願望

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 次に俺が目を覚ましたのは皿の上だった。埃をかぶらないようにハンカチが被せてある。俺はハンカチを押しのける、どうやら布団の上にいるようだ。

「ウィル! 起きたで! バーガーが目を覚ましたで!」
「うお! 起きたか! 生きてるか!」

 若い夫婦が、俺に顔を近づけてくる。まだ頭がハッキリしない俺は、そのままウィルに抱かれ頬ずりされる、髭が擦れて痛い。

「あかん! 削れてるで!」
「うお! やっべ!」

 ハンバーガーおろしになる前に開放された俺は、今度はセニャンに抱きかかえられる。俺はどうなったんだろう、齧られたところは? 痛みはないが。

「絶対に起きると思っとったで」
「し、心配かけてごめんなさい」
「ホンマや、あんた3日間も寝てたんやで、ずびっ」
「3日も!? あの鏡を見せてもらっていいですか?」
「ああ、鏡やな、任せとき!」

 俺は鏡を見た瞬間驚愕した。齧られた跡は残っているが、傷が塞がっている。パンが生えてきたとでもいうのだろうか?

「俺は、隣りの赤ちゃんに齧られたはずじゃ?」
「せやで、半分くらい食べられてて焦ったわぁ」
「治療は? 俺に何をしたんですか?」
「うーん、医者も匙を投げてもうて、途方に暮れてたんやが。そうや、薬草がいつもより早く萎むようになったなぁ、薬草かなり使ったで」

 つまり薬草で傷が再生したってことか? これは憶測だが、挟んだものの力を吸い取って使ったのか? 薬草だから傷の治癒ができたと考えるならば、辻褄は合う。

「お母さん、お父さん、ありがとうございます」
「何をいまさら、お前はワイの息子やで、何度でも救ったるわ」
「何カッコつけてんねん、あたしらはただそばにいただけやん」
「そ、それをいうなやー、いまカッコつけててん」
「カッコいいで、息子は勇者だけど、英雄はウィルやで」
「ふへへ、ほんまかいな!」

 いつも思うがホント仲睦ましいな。元の世界の壊れてしまった家庭環境とは180度違う······。俺は元の世界に帰りたいのだろうか、否、帰れないなら、ここで幸せになるだけだ。

「そうや、隣りの赤ちゃんは熱出して寝込んでいるで。向こうは食中毒らしいけどな」

 美味しくなかったのか······。いやなんで俺は美味しくなくてショック受けてるんだ、これもハンバーガーとしての性なのか、被食願望とかアブノーマルすぎる、童貞こじらせたってレベルじゃねぇぞ!

「そう、ですか、お見舞いに行きたい、です」
「よく言ったで! さすがワイの息子や。ほな行こかー」
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