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六章『ピクルス編』

第1156話 悪童の魔剣2

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「いやぁ、見事でござった。久々にいいものを見れたでござるよ」
「ブラギリオン」

 漆黒騎士はつかつかとフランクに近づいてくる、みんなが止めようと動き出すまえに俺は一歩前に出た。俺が抱いていた疑問は確信に変わっていた、この肉体に戻ってハッキリとわかった。

「あんただろ? 異世界最強なのは」
「え?」

 アイナたちが驚いた顔をした、屋上から降りてきたメアが笑った。

「あはははは! そんなわけないじゃない! あのイズクンゾ様より強いなんて、たしかにブラギリオン様は強そうだけど、四天王が魔王様より強いなんてありえないわ!」
「はっはっはっはっはっ!」

 ブラギリオンが腰に手を当て高らかに笑った、メアが引いた顔をする。

「あっぱれ、あっぱれでござるよ!現代最強番重氏、如何にも拙者がこの世界で最強でござるよ」

 世界が2つあれば、二人の最強がいる、俺はずっとぼんやりと頭の隅で考えていた。イズクンゾは俺の世界で言うところのギアだ、精神に対して肉体が伴っていなかった。

 二つとも作者が同じ女神の作った世界だ、この世界にも俺と同等の存在がいてもおかしくないだろう。

「質問があるんだ」

 ブラギリオンは肩を竦めて促した。

「なんでイズクンゾについてたんだ? あんた悪そうな人じゃない感じがする、余裕で殺せただろ?」
「愚問でござるなぁ、拙者と番重氏のみが理解(わ)かることでござるよ」

 ああ、なるほど。

「相手が欲しかったのか」
「正解でござる、諦めていたんでござる、藁にもすがる気持ちとはまさにこの事、魔王様は拙者の願いを見事成就させてくれたでござる」
「そうか、イズクンゾが最強になるか、それを超える者が現れるかって感じか、そうだよな、俺もあんたくらい長生きすればそうなったのかもな」
「それは違うでござるよ、拙者らは似てこそいるが本質は根本的に違うでござる」
「というと?」
「拙者は悪、番重氏は正義ということでござるよ」
「そうか? ここまでいくと悪だとか正義だとか、それこそどうでもよくなってこないか? ほらもっと他にあるだろ?」

 俺はアイナを見る。

「わかるわー、拙者それマジわかるでござるよ、他者の心はこの腕っ節ではどうしようも無いもの、この力で変えることも可能でござるが、それでは元も子もないってことでござるよね。楽しいでござるよな、拙者の場合はアイドルを推しているでござる、あれは手に入らぬからそこ、儚げで刹那、何よりも尊いものでござる」
「わかるぞ、じゃあ喧嘩するか!」
「やろやろ、表に出るでござる!」

 メアが呆れた顔で言った。

「こいつら馬鹿すぎるわ、付き合ってられないわよ!」
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