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六章『ピクルス編』

第1133話 最悪の魔王32

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「異物も何もあるかよ、解析しやがれ」
「それにさ、わかってるのか? これをしたらはギアは……」
「なんのために地獄から帰ってきたと思ってんだ」
「私の場所を地獄呼ばわりしないでください」
「神(しろうと)は引っ込んでろ」

 本当にいいのか、異物混入したままで……
 なんだこの迷いは……こんな最終局面で……

「バーガー様」
「アイナ」
「告白します」
「好きなことは知ってるよ?」
「それは周知の事実です」
「まだ秘密があるのか」
「ずっとバーガー様を食べたいと思っていました」
「俺もアイナに食べられたいと思っていた!」

 脊髄反射で答えていた、そうか、俺はアイナに食べられたかったんだ、あの時からずっと。漠然と思っていたことが、当然と思っていたことが、言葉となり理解したことで俺を覚醒させる。

 今の俺はハンバーガーだ、食べられてこそその本懐を遂げる。食べられたいから今の状態に拒否反応が出ているのか。

「だから安心して食べるために! ギアを挟んで最強になってください!」

 アイナの瞳から涙が零れ落ちる。頬を赤く染めてもそれでも健気に笑っている。アイナは俺より俺のことが分かっていたんだな。そうだよな……俺も同じ立場だったら叫んでたよ、だからこそ言おう。

「違うよアイナ」

 俺はギアを押し出した。

「あ? 何やってる、俺の力も使え」
「ギア、違うんだ『最初はそうじゃあない』」
「(な)んだと」
「バーガー様?」
「今が最高の状態なんだ、今が一番美味いんだ、ジゼルの精密な火加減、エリノアの豪快な調理、殿を務めてくれたサガオ、そのサガオを支えてくれたヒマリ、可愛いモーちゃん、よく死んだスー、そして敵も味方も喜びも怒りも悲しみ楽しみも、これに達するためにあった工程に他ならない。皆の生きた証明、努力の結晶、これまでの全てを挟み込んだ俺というハンバーガー」

「そしてそれを食べてくれる食いしん坊なアイナ」
「もうバーガー様ったら」
「食べてくれるか? もう一度」
「はい!」

 アイナが俺を手に取る。少し見つめ合う。
 後悔はなかった。内なるハンバーガーが歓喜で震えるのがわかった。

「いただきます!」


 召し上がれ。

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