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六章『ピクルス編』

第1062話 純悪の魔獣29

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 漆黒タワー前、シチューが圧倒的な力を見せる中、一人の大男が現れた。

 シチューとサガオの間に割って入ったのは……

「グレイブ……様?」

 サガオがポツリと呟いた。そしてハッとする。

「グレイブ様!!」
「そうだ、グレイブ・ホーリーガーデンだ」

 その声色に違和感を覚える。
 怒鳴らない、グレイブは無心の呪いにより怒りだけが残った状態だったはず、会話もままならないほどに始終怒鳴り散らすはずだ。

「呪いが解けたのですか?」
「ああ、完全に跳ね除けた」

 サガオは知らない、平常時のグレイブを、今のグレイブからは怒りは感じられない。それどころか前のような怒気がないため少し小さく見える。

「気をつけてください!あれは魔獣チワワです!」
「ああ、こいつだろ」

 グツグツと音がした。なんの音か理解した。

「こんな生物いていいはずがない」

 感情を取り戻し、自身の感情を完全に制御出来るようになったグレイブは静かにキレていた。

 それは呪い時のような暴走する溢れ出す怒りではない。
 これは静かなる怒気。熱いのに冷たい。たしかな人間の感情だ。

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