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五章『チーズ編』

第639話 大戦争14

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「カマさん、行きますぞ、鎌鼬」

 聖鎌から魔力生成された風の性質を持つ鼬が飛び出す。と言っても視認しにくい風の魔法だ。魔獣チワワは直進したまま、もろに直撃する。

無傷。

「ヴァルヴァル!!」
「効果なし、旋風」

 今度は設置型の風魔法だ。魔獣チワワの周囲に風の刃が発生する。

「ヴァHAHAHAハハハハーー!!」
「皮膚が変化していますな。今のチワワは岩石よりも硬い外骨格を纏ってますぞ!」

 リトルが前に出た。

「私が行こう、小隊連携だ!」
「おお!!」

 聖騎士を引き連れリトルが先陣を切る。

「おおおお! ビックソード!」

 リトルは小柄な体型にも関わらず大剣を軽々と振るう。ビックソードは重力魔法によって軽くなっている。そういう魔法武器(マジックウェポン)だ。

 リトルは軽業師が行うようなナイフ捌きを大剣で実現させる。あんなもの俺でも受けきれないだろう。手数が足りない。

「ゲヘヘ」
「むっ!?」

 魔獣チワワは文字通り手数を増やした。そう3本目の腕が生えたのだ。否、それどころか後からあとに背中から大量の腕が生えてくるではないか。

 伸びる腕がリトルを捕まえようと執拗に迫る。

「旋風!」

 オショーの魔法援護により魔獣チワワの腕が幾つか切断される。生えたての腕は切断できるようだ。

「挟み込め!」

 尚もリトルは挟撃指示を出す。指示を受けて聖騎士たちが左右に分れ魔獣チワワを槍で突く。背から生えた長い腕でその槍を掴んで止める。そして無造作に振り回す。聖騎士たちが空を舞う。

「槍は掴まれて不利だ。剣を抜け! 魔力を込めて切りつけろ! 少しでもダメージを与えろ!」
「おお!!」

 リトルが魔獣チワワの腕の殆どを相手取っている。そのお陰で聖騎士たちに腕の追撃はほとんどない。

 リトルは正面からやや外れるように立ち回っている。

「ヒマリ! 今だ!」

 リトルが大きく右に飛ぶ。背後にいたヒマリが素早く剣を構える。

「サンライトフラッシュ!」

 双子聖剣サンザフラのサンの方から放たれた熱光線が魔獣チワワを襲う。

 魔獣チワワは顔を顰めている一時的に視力を奪った!

「今だ! 続けえ!!」
「ヴァハハ!!」
「なに!?」

 魔獣チワワが飛んだ。一瞬にして蝙蝠のような皮膜を腕と脇の間に作ってばたつかせて飛んでいる。

「魔獣チワワが視力を取り戻しました。そして制空権を取られました!」
「まだだ! 翼の魔導師から授かった翼を再展開すれば取り戻せる!  それに対空ならオショーさんがいる!」
「おまかせを」

 オショーが聖鎌を大きく振るう。空が唸る。

「対空には少々自信がありますぞ」

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