上 下
553 / 1,167
四章『トマト編』

第553話 悲しい悲しいバーガー

しおりを挟む
 えっとですね。とんでもないことになりました。僕はね。勇者やらせてもらってるハンバーガーなんですけどね。頑張って伝説の剣は手に入れたんですよ、そこまではよかった。でもね、伝説の盾をね、逃してしまったんですね。伝説の盾の適合者を探す大会で、以前戦ったドレッドヘアのプロレスラーと再選しましてね。ええ、これは運命かな? と思いましたよ。まさかの再選ですよ。それでね。さすがに伝説の剣使うのも卑怯かなっと思ってやめておいたんですよ。そしたらめちゃくちゃに追い詰められましてね。なりふり構ってられなくなった私はね、アイナさんにですね。「で、伝説持ってきて! M! M!」って叫んだんですよ。今思えばみっともなかったですね、ええ。でもね、アイナが投げ入れてくれた伝説の剣を咥えてね。勝ったなと、そう確信したんですよ。でもね。すっげぇ強くてプロレスラー。やっぱり筋肉なんだなーって思いながら失神しましたね。そのあと女神に会いましてね、ええ死にかけましたよ。めちゃくちゃに笑われまして、もう情けないったらなかったですね。それでももしかしたらと、いちよ勇者だし伝説の盾も空気読んでくれるんじゃないのってちょっと期待してたんですよ。パーティーメンバーの妹さんの手に渡ったんですね。年も2桁になってちょっとの子ですよ。いや、彼女も背負ってるものがあるのは知ってますけどね。ええ。でもそれでも私って勇者やし。ねぇ。みなさん。

「バーガー様?」
「おおう!? なんだアイナ。俺に何か用か!?」

 ここはジゼルの家、その自室だ。俺たちはクッションに座り、今日の大会の話で盛り上がっていた。

「いえ。なんだが考え事が長いなって」
「あ、肩に乗ってたんだった」

 アイナは俺が肩に乗っている時、僅かなヒール(下のバンズのこと)の動きから気持ちを読めるまでに成長しているのだ。

「マナーの盾は残念でした。でもヒマリを選んだってことは何か意味があるんだと思います」
「そうだよな」

 ぶっちゃけめっちゃ欲しかった。俺の体は脆弱なパンなのだ、それはどれだけ鍛えてもパンの域を出ないということ。俺からすればマジで喉から出がてるほど欲しかったものだった。

 エリノアがジゼルのベッドに寝転がりながら言った。

「ヒマリと一緒に戦えば?」
「それはどういうことですか?」

 食いついたのはアイナだ。

「いやさ。ヒマリの肩に乗れば実質Mソードとマにゃーの盾を使っているようなものかなって」
「それは! それは・・・・・・ダメです」
「どうして?」

 エリノアはニヤニヤと下卑た笑みを見せる。

「それくらいにする」
「にゃ!!」

 部屋に戻ってきたジゼルがエリノアのお腹に座る。エリノアの抵抗虚しく頭をゴシゴシと撫でられる。

「2人ともお疲れ様。コーヒー」
「ありがとうございます」
「バーガーには上薬草」
「ああ!! ありがとう!」
「ミーには?」
「ない」
「どうして!! こんにゃのってにゃいよ!!」
「備蓄してたお菓子全部食べたでしょ」
「うにゃ!? にゃぜそれを!!」
「お金あげるから買い出し行ってきて」
「は、はい。謹んでお受けしますにゃー」

 あざといにゃーを言ったエリノアはキビキビと部屋から出ていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...