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四章『トマト編』

第393話 伝説の剣を抱いて16

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「その剣が伝説の剣と言うことはわかりましたが、経緯を聞いてもいいですか?」

 アイナが俺を拾い上げて肩に乗せる。そしてスカリーチェから一歩離れる。何やら警戒してくれているようだ。

 スカリーチェはその様子を見ても笑顔を絶やさない。

「もちろん聞かれなくても話しまスよ」
「お願いします」
「他に連れがいるなら、集めてからでもいいでスよ」
「それが・・・・・・この山に近づくと幻覚に襲われる人が続出して」
「ん?  あー、それならもう大丈夫っスよ」
「どうしてですか?」
「伝説の剣を守るための結界が解けたからでス。あの結界には幻覚作用があったんスよ、魔力濃度も自然と平常値に戻るっスよ」

 ホントかウソかはわからないが試してみるか。

「ならこの伝説山の山頂に拠点を築くか」
「話が本当ならそれがいいでしょうな。周囲を警戒している聖騎士たちに伝令を頼みましょう」
「ああ、頼む」

 小一時間後。

 全軍が揃い。移動を開始する。
 スカリーチェが少し離れた途端にシャニーが近づいてきた。

「す、すごいねバーガーさん。伝説の剣を手に入れちゃうなんて」
「だ、だろ?」

 今の俺はスカリーチェのことで頭が一杯だ。

シャニーがさらに顔を近づけてくる。

「バーガーさん、ちょっといいですか?」
「・・・・・・ああ、アイナ、ちょっとシャニーと話してくる」
「え、わかりました」

 俺はアイナの肩からシャニーの肩に飛び移る。
 スカリーチェからあまり離れていない位置で話し始める。

「こ、このくらいの距離なら怪しまれないでしょう。離れすぎもよくないですから」
「・・・・・・どうしたんだ」
「あ、あの人、本当に伝説の剣を護りし者ですか?」

 鋭い・・・・・・シャニーは臆病なせいか危機管理能力が異様に高い。

 話したいところだが、俺がスカリーチェの正体を言ってしまえばアイナが殺される。いや、ここにいる人たち全員が脅威に晒される。

 伝説の剣を腹に刺したまま100年耐える化け物だ。
 言葉の説得力が違う。

「そうだ」
「そ、『そうですか』。わかりました」

 ベースキャンプに戻り、事情を説明する。
 広場を作り、皆を集める。

 スカリーチェが皆の前に立つ。オショーが口火を切った。

「では、説明をしていただきましょうか?」
「はいっス。私はスカリーチェっス」

 名前そのままかよ!

「スカリーチェ・・・・・・たしか、旧魔王軍の旧四天王でもその名を持つ者がいましたな」
「名前が被るのはよくあることっスよ。スカリーチェなんてどこにでもいる普通の名前っスし」
「・・・・・・続けてくだされ」
「はいっス」

 この魔女、心臓に針金が生えてやがる。

「100年くらい前の話っスかねー。伝説の剣を運搬中に何かに襲われたっス」
「・・・・・・何かとは?」
「知ってたら何かなんて呼ばないっスよ」

 絶対スカリーチェだ。

「運搬部隊も精鋭が揃ってたっスけど、勝てなかった、残った私が木箱に入ったMソードを抱えてあの伝説山に逃げ込んだんス」
「疑問がありますな」
「なんスか?」
「貴方は人間なのですか? その話が本当ならば貴女は100歳を超えていることになりますぞ」
「あー、結界の中にいたからっスね。皆が見た幻覚もその結界の効果っス。納得してくれたっスか?」

 話に筋は通っている。

 実際は運搬部隊を襲ったのはスカリーチェだし、伝説の剣をこの100年間隠し続けたのもスカリーチェだ。

 誰かが挙手している。その手は震えている。

「誰っスか?」
「ぼ、僕は冒険者のシャニーです」

 そう、小柄な彼が手を震わせながら、スカリーチェを見つめている。

「なんだか大丈夫っスか?」
「だ、大丈夫です!」
「それで質問はなんスか?」
「し、失礼ですが、貴女が人間か確かめさせて貰ってもいいですか?」

 やっぱりシャニーは鋭い。もしかすると違和感に気づいたのかもしれない。

 スカリーチェがどうでるかヒヤヒヤしていると、

「別に構わないっスよ。用心深いことはいいことっスからね」
「では彼女に身体検査を、女性なので、そうですな。ジゼルさんに頼んでもいいでしょうか?
「オッケーオショー。私が調べる」

スカリーチェとジゼル、そしてエリノアがテントの中に入って行った。

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