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四章『トマト編』
第380話 伝説の剣を抱いて3
しおりを挟む洞窟を直進する。幸いにも入り組んではいないようだ。
横道は多いがこの直線の洞窟が一番太いらしい。
木で言えば幹のような部分に当たるのだろうか。
ならば先には何がある? 行き止まりだけは困るな。
トマトの魔力が半分を切ったら引き返そう。
あれ以来トマトどころか、光る石も見当たらなくなった。
暗い道を頭に乗せた光る石が照らす。
この石に魔法強化(マジックストレングス)を使ったらどうなるんだろう? 今は魔力が勿体無いから使わないけど、試してみたいな。
「ん?」
トマトの魔力をほとんど残して、俺は異変気気づく。
「かなり開けた場所に出たみたいだな」
徐々に洞窟が広がっているとは思っていたが、こうも一気に広がるとはな、かすかに見えていた天井も見えなくなっている。
「それでも空の光が差し込まないとなると、いよいよここは地下世界なのかもしれないな」
きっとケモナー歓喜の母性溢れるママが現れて俺を暖かいお家に連れて行ってくれるのだ。
「と、ふざけている場合ではないか。ここからさらに真っ直ぐ進むか否か・・・・・・」
迷っている場合じゃないか。この先に何があろうと俺はここから脱出しなければならない。
俺は進む。ひたすら進む。
体感ではかなり時間が経ったようにも思えるが、意外と経っていないかもしれない。
この石の光がなかったら、かなり怖かっただろうな。
野太い声で叫んでいたかも。
「む!?」
石の光が弱くなっていく。まさか魔力が切れたのか?
どうしよう! 電池は?! 単三か? 単三なのか? 単三だよな!
「まだ魔力に余裕はある! トマトの魔法を使ってこのら光を強化する! 『魔法強化(マジックストレングス)』」
俺は光る石に魔法をかける。次の瞬間。
閃光玉のように石が光り輝く。
「なんて光量だ!」
俺は目を閉じる。光が収まるのを待つ。
少しして俺は目を開ける。
「周囲の石も光ってる!」
どうやらここらの鉱石は魔力を得ると光る性質があるようだ。
俺の魔法の影響で一時的に光っているのだろう。
天井もよく見える。ここら一体が昼間のように明るくなった。
「・・・・・・え」
先に見えるのは巨大な岩。・・・・・・いや岩なんかどうでもいい。
問題はその岩の根元にいるものだ。
「人間?」
そう、人間が岩にもたれ掛かっている。
まさかクリスの爆発に巻き込まれたのか?
俺は慌てて跳ね寄る。
「うわ・・・・・・」
近ずいてわかった。この人間の異常性に・・・・・・。
「腹に剣が刺さってる」
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