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四章『トマト編』
第366話 怪物の眠る森15
しおりを挟むニードルハックは右腕を前に突き出す。
聖騎士たちが俺たちの前に立って盾を構える。
「棘散弾砲(ニードルショットキャノン)」
ニードルハックの腕についている棘が勢いよく飛び出す。
盾に守られていなかったら誰かしらが被弾していただろう。
「あの魔人は棘を自在に操ります、お気をつけください勇者様!」
「ありがとう!」
ニードルハックの腕に棘が生えてくる。無尽蔵ってわけじゃないだろうが、そう簡単に残弾が尽きることは無いだろう。
「今度はミーたちの番だよ」
「鋭利(シャープネス)!」
ジゼルが、エリノアの掲げる剣に強化魔法をかける。阿吽の連携だ。
「バーガー様! 私たちも行きましょう!」
「ああ!」
「にゃら!」
エリノアの剣をニードルハックは何のためらいもなく腕で受ける。
硬質な音を響かせて2人の動きが止まる。鍔迫り合いだ。
「ぐにに、結構硬いにゃ」
「ふん。お前は他の奴とは違うようだな」
エリノアが動きを止めてある間にジゼルが側面に回る。
「火(ファイヤー)の槍(ランス)」
炎属性を持つ魔力生成された槍がジゼルの手に握られる。
腕を引き絞り投擲する。
少女の力だがそこは魔法だ、かなりの速さでニードルハック目掛けて飛ぶ。
ニードルハックは左手を向けて棘を飛ばす。火(ファイヤー)の槍(ランス)は何発か耐えたが、数に推されてニードルハックに到達する前に爆発して消えた。
「放て」
「はい!」
アイナがエリノアの背後から矢を放つ。エリノアの頭をかすめてニードルハックに命中する。
「腕のいい弓兵がいるな」
矢の刺さった棘が落ちる。そしてまた新しい棘が生えてくる。
血は出ていない。あの棘を何とかしなければならないな。
「こちらからもいくぞ」
「にゃ!?」
ニードルハックは徒手空拳でエリノアとやり合う。
あの棘の鱗が鋭利な凶器と化している。
速いな。
それでもエリノアは受け続けている。
「甘い」
ニードルハックはエリノアの折れずの剣を弾きとばすと、超至近距離の近接戦を仕掛けてくる。
エリノアには有効打がない。ギリギリで受け流している。
「アイナ援護できるか?」
「あれだけ速いとエリノアに当たる可能性があります」
エリノアがどんどん押されていく、そして。
ニードルハックはエリノアの手首を掴むと背負い投げをする。
エリノアは地面に叩きつけられる前に体をよじり、四肢を使い着地する。
と、同時にエリノアの顔面目掛けてニードルハックの蹴りが飛ぶ。
間一髪エリノアは四肢を伸ばし後退することでそれを回避する。
立ち上がった直後にニードルハックはエリノアに詰め寄る。
ニードルハックの手のひらがエリノアの腹部に当てられる。
次の瞬間エリノアが吹き飛ばされる。
・・・・・・あれは一体。
ジゼルが呟いた。
「魔人組手」
「なんだそれは」
「旧魔王が使ったとされる武術」
なんたってそんなものをあの魔人が?
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