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四章『トマト編』
第353話 怪物の眠る森2
しおりを挟む鬱蒼と生い茂る森を俺たちは進む。すでに聖騎士たちが道を切り開いてくれているお陰で、今のところは進みやすい。
森は静かだ。木々の密度は違えど故郷のレタスの森を思い出す。
心做しか俺を乗せるアイナの足取りも軽い。
「バーガー様。ここには色々な植物が自生していますね」
「そうだな。お、あれは上薬草だな」
上薬草(レタス)があるということは魔力濃度が高いということだ。魔力感知に疎くてもこういった知識があれば捜索も捗るだろう。
「現地の味を知りたい。ちょっと挟んでおくか」
「はい!」
アイナは素早く上薬草(レタス)をとる。葉を何枚かむいて綺麗な葉を俺に挟ませてくれる。
「美味しいですか?」
「うん、このシャキシャキとした食感は挟む側からしてもなかなか楽しめるぞ」
それを見ていたオショーが興味深そうに尋ねた。
「挟んだものの魔法を使えるというのは本当ですかな?」
「ああ、バンズ魔法(マジック)とでも名付けようか」
「それは素晴らしい固有魔法(ユニークマジック)ですな」
「オショーさんのそれは?」
俺が視線を向けるのはオショーさんの背負っている大鎌だ。
「これですかな。そうですな。勇者様、私を含めた聖騎士大隊長たちは各自それぞれが『聖剣』に選ばれている者たちでしてな」
「それも『聖剣』の一つというわけか?」
「いかにも、これの分類は、聖剣の亜種『聖鎌』と言った所でしょうか」
聖剣には意思のようなものがあるのか、それで特定の誰かを指名して自分を使わせるのか。
「伝説の剣も聖剣なのか?」
「どうでしょうなぁ。記述にも伝説の剣としか書かれておりませんので・・・・・・。ただこの世の強力な剣の殆どは聖剣と魔剣の二つが殆どですぞ」
「魔剣ってなんだ?」
「聖剣が魔を断つ剣ならば、魔剣は聖を断つ剣です」
「互いに強くて。互いに弱いわけか」
「ざっくりと言えばそうですな」
光と闇は互いに弱点。よくあるな。
前方を歩くエリノアが声を上げる。
「にゃんかいるにゃ」
一同が伏せる。エリノアが一人で行くとジェスチャーして、木を登っていった。
なにか、伝説の剣に関するものだといいが・・・・・・。
少しして、少し離れた前方の木々が力づくで押し倒されていく。
エリノアが元の場所に戻る。
「魔物だ! こっちに来てる!」
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