上 下
348 / 1,167
四章『トマト編』

第348話 貢物

しおりを挟む

 旅は順調だ。

 何せ旅で危険なのが野営なんだか、俺たちが野営する際、同じタイミングで出立した、いくつかの冒険者パーティが近いところで野営をしてくれるのだ。そのおかげで、互いに見張り合えるので、比較的安心することができる。

 こういう所で協力するのは、さすがは生き残ってきた者たちと言えるのだろう。

「バーガー! これみてほしいの!」

 おやおやスーが呼んでいる。

「どうした?」
「これおとなりの人たちからもらってきたの!」

 スーが抱えているのは大きな葉っぱに包まれた肉だ。

「・・・・・・こんなにもらったのか」
「スーのすごさにかんめいをうけてみついだにちがいないの!」

 俺はスーが来た方にあるキャンプを見る。一番近いところで顔も見える。こちらを向いてナイスガイがにこやかに親指を立てている。

 うん、貢いだんじゃない。
 恵んでもらったんだ。

「ぼくってすごいの! こうすればお肉たくさんあつまるの! ほかの人たちからもみつがせるの!」
「もう十分だろ、やめなさい。人々が貧困で苦しむぞ」
「むー! それはよくないの! やめるの!」
「にゃんだその肉?」
「スーが貰ってきたんだ」
「そうにゃんだ、見たところ魔物の肉だにゃ。それにゃら丁度いいにゃ」
「何が丁度いいんだ?」
「バーガーにゃにか忘れてにゃい?」
「俺が忘れるわけないだろ」
「混合肉を作って合成魔法を色々試すって言っていたじゃにゃいか」
「あー、すっかり忘れてた」
「もうしょうがにゃいにゃあ」
「すまん」

 俺はバンズのクラウンの部分を前に出してベロベロさせる。ハンバーガーがよくやる許してほしいのジェスチャーだ。

「そこまで謝ることでもにゃいでしょ。ほら、ミーの用意した魔物肉と、スーが貰ったきたその魔物肉を使って試してみようよ」
「よし! やるか!」


 その時だ、背筋に寒気が・・・・・・背筋ないけど。


 振り返れば、テントをセットし終えたアイナが、テントから顔だけを出してこちらを見ている。

「あ、アイナも一緒にどうだ?」
「いいです。私はちょっとそこまでいってトレーニングしてきます」

 アイナは行ってしまった。あわわ!
 こ、こんな時はどうしたらいいんだ!?

「ぷっ。バーガーの狼狽っぷりは中々の見世物だにゃ」
「う、うるさい。でもどうしよう」
「そんにゃの簡単だよ。疲れて帰ってきたアイにゃにうまい料理を出してやるだけだよ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...