上 下
343 / 1,167
四章『トマト編』

第343話 ナイスアイディア

しおりを挟む


「このクエストなら、伝説の剣がある場所に近いですね」
「よし、ならそれを受けようか」

 王さまとの話し合いから数日、学校が休みということもあり、俺とアイナは冒険者ギルドの2階に来ている。

 伝説の剣が眠る場所に向うついでということで、その場所に近いクエストも受けて一緒にこなしてしまおうという魂胆だ。

「あ、でもこれはSクラスのクエストですね」

 忘れていた。Fクラスのクエストはその殆どが王都内部か、もしくは王都近辺のものに限られている。

 王都から離れるだけでも難易度が上がるのだ。

 それも魔物の多い山や森と言った場所になればそれも顕著に現れる。

 そして俺たちが今から向かおうとしているのはここから馬車で1週間の場所だ。


「この魔力調査っていうのは何でしょうか?」
「俺も知らないな」
「そ、それはね!」

 俺たちが振り返るとシャニーがいた。オドオドとメガネを揺さぶっている。

「知っているのか?」
「う、うん。魔力濃度が異常に高い場所に定期的に出るクエストだよ」
「そうなんだ」
「ちょ、調査とは言っても濃い魔力に釣られてきた魔物と戦うこともしばしばだから、Aクラス以上のクエストになることがほとんどなんだ」
「今回はSクラスだな」
「場所が場所だからね」
「いわくつきなのか?」

 王さまが言っていた場所は通称『怪物が眠る森』と言われている。名前からして何かあるとは思ったが、そこまでやばいところなのか。

「うん、魔物も多いからかなり危険な場所みたいだね」

 そうか、それなら受けるのは諦めよう。行きはするがな。

「バーガー様、クエストは諦めて『怪物の眠る森』に行きましょうか」
「せやな」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「なんだね」
「く、クエストは受けられないんだよ? どうして向かうの?」
「え、ああ、それとこれとは別の問題なんだ。俺は勇者としてそこに向かわないといけない。クエストは受けられたらいいなぐらいにしか思ってなかった」
「私たちお金ないので」
「アイナ、しー」

 それに王さまからも兵士を出してくれるみたいだし、大丈夫だろう。

「話(はにゃし)は聞かせてもらった」
「・・・・・・エリノア、いつからそこにいたんだ」

 エリノアは柱の影からひょっこりと顔を出している。

「『このクエストにゃら、伝説の剣がある場所に近いですね』からだよ」

 最初からじゃねぇか。

「バーガーは体は柔らかいくせに脳みそは柔らかくにゃいね」
「どういうことだ」
「ミーと同じ方法を使えばいいんだよ」
「エリノアと同じ方法?」
「とは言ってもだよ、ミーの場合は偶然だったんだけどにゃ」
「話が見えないぞ」
「んふふ、Fランクのクエストを受けて、その時にSクラスの魔物を討伐するとどうにゃる? はいシャニー」
「え、ぼ、僕!?」
「いいから、さーん、にー、いーち」
「は、はい! その場合は特別にSランクまでランクが引き上げられます」
「ああ、エリノアが前に言ってたやつか」

 エリノアはFランクのクエストを遂行中に、Sランクの小竜(ワイバーン)と鉢合わせて、それを討伐したんだっけか。

 それで一気にSランクになったと。

「だが、あの場所に近いFクラスの依頼がないんだ」
「そんにゃの迷ったとか、テキトーに言い訳すればいいんじゃにゃいの?」
「ガバガバな作戦だな」
「あ、それならバーガー様。この薬草の納品クエストを受けてみてはどうでしょうか?」
「薬草採集か?」
「はい、これなら場所の指定もないですし薬草ならどこにでも自生しているので、怪物の眠る森でもできますよ!」
「なるほど近隣でとれると見越した依頼を逆手にとるのか」
「どうでしょうか?」
「パーフェクトだアイナ」
「ありがとうございます!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...