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2話
しおりを挟む後宮には次々と新しい妾姫がやって来る。僕のような田舎者とは比にならないくらい、教養を身に着けた者もいる。
王さまはたまに僕に歌を作って贈ってくれたが、僕はまともに返歌することができなかった。
ああ、僕も勉学しなければ、と思ったときにはもう遅かった。
「室の等級を下げる」
王さまの寵愛を失って1年後、そう宦官に伝えられた。僕は最初に与えられた豪奢な室から追い出され、簡素な室へ移された。
それでようやく僕は焦って、宦官や王さまの側人たちに「王さまを今夜は僕のところへ連れて来てください」とお願いすることにした。
僕にとってそれは初めてのことだった。心のなかでは、それは簡単だと思っていた。王さまの寵愛があった間、宦官たちや側人たちはいつでも僕に親切であったからだ。
しかし、宦官や側人たちの控えの間へ行って、そこでようやく現実を知る。
宦官や側人たちのもとには「どうか王さまに私の存在を伝えてくれ」と願う妾姫たちが大挙して押し寄せていたのだ。
妾姫たちは地に額をこすりつけて歎願していた。中には肌を露出したり、しなだれかかる者までいた。彼らは整然と一列に並んでいた。まるで店先に並ぶ野菜か何かのようだ、と僕は思った。
宦官や側人たちはそれを眺めて、気に入った妾姫がいれば次々と声をかけた。声をかけられた妾姫たちは喜んであとをついていく。妾姫たちのほとんどは身分の低い家出身の者たちだ。
要するに、賄賂が渡せず、体を差し出すしかない家の者だ。——いまの僕のように。
「おや、光琳様のようなお方までここに来られるとは、まこと、王の移り気には困ったものですね」
僕が立ち竦んでいると、すぐに側人——秀鴈さまに声をかけられた。彼は王の護衛兵で、後宮への出入りが許されている唯一の武人であった。
いつもは武人とは思えないほど柔和な笑みをうかべる彼だが、今日、彼は狡猾な笑みを隠しもしない。
僕は知っている顔が、ぎらぎらした目でこちらを見てくることにしりごんだ。
「あの」
僕の言葉を遮って、秀鴈さまは鷹揚に頷いた。
「ええ、おっしゃりたいことはわかっています。我々は王にその夜どの姫と過ごすか、助言申し上げることができる立場です。あなたの態度次第では、考えないこともありませんよ」
言って、秀鴈さまは僕の着物の袷に乱暴に手を突っ込んだ。
「なっ……」
抵抗しようと思った。たしかに、僕はその手を拒むつもりだった。しかし。
「ああ、あっ!」
「こんなにぷっくりとさせて。王に相手をされなくて久しいですからね。うずいているのでしょう?」
僕の愚かな体は、乳首をきゅっとつねられただけで、すっかり甘く溶けてしまった。
「ほら、あなたは痛くするのがお好きですからね」
「ああっ! や! い、いたい!」
爪を立てられて、その場に崩れ落ちる。じんじんとした痛みが駆け巡り、どくどくと全身が脈打つ。
「立ちなさい」
秀鴈さまが命令する。馬鹿な僕は抗議もせず、言われた通りに立ち上がった。
「ふっ……もうこんなになっているんですね」
立ち上がると、僕の股間が着物を押しのけようとしている様が丸見えになった。僕は顔が赤くなるのを感じた。
「いまから私の後に付いて来るなら、王にあなたの室へ行くことを提案申し上げますよ」
僕は、ためらったあと、頷いた。
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