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自覚 3

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 昨日も退社時間が過ぎたあと、あの指が悠の胸をつまみくるくると愛撫をくわえると、腰から下肢にすべりおちてきた。
 片手で器用にズボンを落とされてしまい、からめとられた陰茎を指技で乱された。

 映人の掌は悠のほそみの陰茎をいじりながら、片手を後ろに回され双丘をなでると、指先は内奥へと侵入していった。
 締め付けをたのしむかのように、入口の浅いところを何度も、何度も挿入され、仕上げとばかりに、電動式のアナルプラグを挿入された。

 映人の指が奥に挿入された時、痛みを感じたことは今までいちどもなく、傷ついたのは初めての時だけだった。
 それからはどんな場所で愛撫をおされても、慣れない自分を傷つけないように配慮してくれていた。

「···········」

 そして、判ってしまった。
 綺麗に整えられた爪の意味を。

「······ぁ」
 
 小さく声を漏らしてしまった悠の声は、さいわい周囲には聞こえていなかった。
 だが、気づいた瞬間かーっと、顔に赤みがさし、躰の中心が少し反応してしまっていた。
 
 おもむろに立ち上がると、悠はなにかの用事のようにオフィスを出てしまった。
 

 トイレに駆け込み、仕事中に慰めるのは罪悪感があったので、顔を流水で洗い気分をたてなおす。
 勃起しかかった欲がなんとかおさまってくれたので、ほっとしオフィスの戻ろうとしたときだった。
 
 廊下を曲がろうとしたら突然、腕をひっぱられ近くの会議室におしこめられてしまった。

「わっ!───な、に?」
「───静かに」

 映人が口許に人差し指をたて、抱き込むようにして悠を見下ろす。
 上質なスーツは悠をすっぽり包んでしまい、映人の香りに包まれた。

 隣の会議室は使用中だったので、その声はあくまでひそめたものだったが、その顔は少しのいたずらが成功した喜びか、優しげなものだった。
 いつもの退社時にみせる酷薄そうな笑みとは、まるでちがったので、悠の鼓動をうかつにも早めてしまい、顔が赤くなる。

「これから、大阪に行かなくてはならなくなった·······数泊にはなると思うが、今週は寄らなくていいから」
「───えっ! 何かトラブル?」

「あぁ、だから相手してやれない───寂しいか?」

 最近よくみる、いつもの少し意地悪な表情だった。

「······そっ、そんな·······こと」
 
 これでは自分が映人の部屋に行くことを待っているみたいに聞こえてしまう。
 言葉で否定していても、その赤くなった顔やしぐさで容易にさっせられた。

 あまりに可愛いしぐさに、映人は悠の頬に唇をかるく落としてから、「また、来週」と、言い残して会議室を出ていってしまった。
 一人残された悠は、顔の熱が引くまで、第二営業部に戻れなかったが、映人はよほど時間がなかったのか、珍しく慌てたようすだった。

 おそらく悠を会議室に引き込んで話している余裕も、ないほどに。
 なのに、少しの隙間をみつけてあのように優しく頬に唇をおとされたら、逆に恥ずかしくなってしまった。

 もっとすごいことをされている筈なのに、あれはまるで恋人にするかのような、コミニュケーションだった。

 オフィスに戻ると、自分の椅子に座り盛大なため息をついてしまう。

 ───今日は、行かなくて良いんだ·······。

 なにかとても、複雑な心境だった。
 ほっとしたような·······でも、ものたりなさを感じていた。

 少なくとも今週は、あの淫らなことをしなくてもいい。
 そんな心配をしなくていいのなら、本来はとても喜ぶべきなのに。

 一時は映人から逃げていたハズだった·······。

 自分でじぶんの感情の整理がつかなく、どうして良いか解らない。
 だけど、脳裏を占めるのは映人のことばかりだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
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