天念少女~スタート~

イヲイ

文字の大きさ
上 下
10 / 47
前章

人じゃないみたいな

しおりを挟む
~人じゃないみたいな~

 《卯月は、くらい食堂に姿を表した一人の友人に声をかけた。
 「おっす、悠太。夜遅いのに元気だな」
「あー…目が覚めたみたいだ。今何時よ?」
「二時四十分。まさか、誰かが起きてくるとは思ってなかったよ」
 卯月は本当は知っていた。月に一度ほどの割合で、悠太は真夜中に起きてしまう体質だということを。そういう人間や睡眠中、神経質な人間は他にもいるが、卯月は悠太がいつ頃目覚め、そして目覚めてからの行動もある程度は把握していた。だから、卯月は一人でいる内から
 一年以上は同じ寮で過ごしているから、卯月の調べたデータ的には完璧と行っても過言ではなかった。
 「なんか飲むか?っても、透じゃないから上手く入れられるか分からねえけど。」
 悠太がそう言うと、卯月は素直に頷き、適当に覚えていた茶の名前を頼んだ。
 少しして、悠太がカップを二つもって食堂の椅子へ座る。長机を境に向かい合った二人は、特にそれと無い会話を嗜んだ。
 陸上部の悠太が好む会話ばかり卯月がした故に、既に一時間が経っていることを悠太は気がつかない。
 「おっと…久しぶりにすげえ熱くなっちまったな。卯月、お前って陸上に詳しかったんだな!」
「まあな!俺さ、心理学が好きなわけ。そんで調べる内に、身体にも興味が移って…結果、陸上にもってな。」
 空っぽのコップを指先でつつく卯月に、悠太は純粋に尊敬の念を抱いた。
 「探求心の塊だな…!」
「へへ、ありがとよ。でも、お前もだろ?」
「俺?」
「ああ。お前の方が陸上に何倍も詳しかった。クラブにも行ってるし、ストイックだよな!」
「そ、そうか?」
 悠太は好きなことを誉められて、心底嬉しそうな笑みを浮かべる。

 「…なあ、悠太なら俺の心理学にも興味を持ってくれるんじゃないのか?」
 卯月はいかにも今思い付いたような口ぶりで本題に入る。
 「心理学か…」
「時々で良い、一週間に一回とか…そうだな、夜、もしも目が覚めたなら…少しづつ俺と一緒に研究しようぜ」
 バチン、と卯月は慣れないウインクを見せる。
 興味新からか、深夜でテンションがはいになっていたのか。
 悠太は二つ返事で了承すると、そのままその日はお開きとなった。
 けれど、悠太は翌日から、夜に目が覚めることが多くなっていた。
 そしてそんな日に食堂へ向かうと、そこにはかならず卯月の姿があった。
 「卯月、お前いっつも起きてんな!」
「いつもは寝てるんだけどね。やっぱ悠太と話すと楽しいんだろうな。目が覚める日が多くなっちゃったよ。」
「はは、奇遇だな」
 二人はいつもの夕食に座る席ではなく、食堂の入り口に近い長机の、キッチンと近い椅子に座る。いつもは使われていない、余分な机も今ばかりは役に立つ。
 「悠太、ノート作ったの?」
「ああ、やっぱりまとめたくってな。お前の話はためになるし。差、今日も頼むぜ先生、ここにゃ早く寝ろとか言うアリスも総もいないしな」
「そうだな!なんならオールナイトでもいけそうだ。」
「そうなれば、総にこっぴどく怒られそうだけどな」
「チーズケーキと透さえ用意すれば気をそらせるさ。」
 二人は心配症の少年の可愛らしい怒り方を思い出して思わず笑いが込み上げてくる。馬鹿にしているわけではなく、ただ小さい子供に叱られているような感覚で、驚くほどに怖くないその姿が鮮明すぎて面白かったのだ。悠太がアリスを思い浮かべなかったのは、アリスが怖いということもある。

 「さあ、始めようか。今日は人の、慰め方だ。」
 卯月は笑った。四月の、真ん中に差し掛かったその日、悠太は笑った。
 卯月が語った慰め方は、少し前から感覚が麻痺していた悠太にとって、ただ興味だけが強くなっていた悠太にとって、これ以上無い刺激だった。》



 「…どうして、どうして、どうして、どうして…」
 アリスはそれだけを繰り返す。隣では光がずっとそばにいるが、どう声をかけて良いのか分からない状態だ。その間、正珠と空は少しだけはなれた場所にいた。
 パーティーから帰宅した夜に近い夕暮れ、それからもう何時間も経った真夜中。
 総達の姿は、どこにもなかった。連絡も、正珠達が今、自分達で出来ることは全て試したがそれでも見つからない。
 失踪したと結びつけるには、四人にとっては容易だった。
 食堂で四人はとりあえず集まってはいるものの、この場を和ますようなものなど当然無かった。
 (今の状況、総達がどこへ行ったのか分かる手立ては食堂にあった弓子さんの連絡先だけ…)
 正珠は乱れた文字を眺める。乱れていても分かる、少なくとも、総達男子四人の誰かが書き記したものではなさそうだ。
 正珠はその文字に覚えがあるが、しかし非常に焦りながら書いただろうとわかる文字は、癖が消えている汚い字であるために誰が書いたのかを思い出せない…というよりかは情報が少なすぎて誰が書いたか答えがでない状況だ。
 「部屋の中にあるってことは、四人はここで連れ去られたのかもしれないね。」
 食堂の隅に体育座りをしたアリスと、ずっとそばにいる光から離れたところで空は正珠に呟いた。
 「だね…わざわざ残すにしては汚すぎるし。……」
 いやでも、癖を隠すためにわざとそうした可能性も残っているのか、と正珠は脳内で考え直す。
 「なんにせよ、弓子さんに会いに行くことくらいしか、出来ることはないね」
「正ちゃんが弓子さんの連絡先、覚えててくれたお陰で助かったよ。」
「どういたしまして!」
 正珠はわざと明るく振る舞った。同時に、アリスと同じようにならないように、と程よくテンションは上げ下げする。不器用な正珠もそれは出来た。
 「じゃあ早速…」
 と正珠が携帯を取り出した時、ふと、手が止まる。
 「…連絡を先にとるより、連絡先から住所を当てた方が隙をつきやすい、か…」
「ん、どうしたの?」
 空は正珠の右側からひょっこり顔を覗き込む。サイドテールがこそばゆく感じながらも、正珠は流し目で空に返事した。
 「いや、パソコンからなら住所、自分で見つけられそうだなって。せーじゅはパソコン持ってないから、気は引けるけど、大のを拝借しようかな」
「え!?それは大丈夫なの!?」
「うん、大のパソコンに迷惑はかけないよ。明日にでも見つけて、弓子さんの家に押しかけられると思う。」
「工場に直接行くのは?」
「あそこの辺り、今日明日は中々入れなさそうなんだ。著名人達がひっそり集まってるんだもん、厳重に立ち入り禁止されてたよ」
「よ、よく見てるね…」
 空は正珠の観察眼に驚きつつも、行動は素早く、側に出しっぱなしの黒いパソコンを開いた。
 「あ…パスワード、だって」
「確か…パソコンの裏に、あるサイトの…パスワードはあるんだよね?それが、このロック画面を特パスワードだったりしないかな?」
 悠太の言っていたことを思い出し、パソコンをひっくり返してみる。そこには、『例の、パスワードはI'M VERI STRONG.』と乱暴な文字があった。
 「…………」
「…………あいむ、べ…り…?すとろんぐ?」
「ベリーのスペル、間違ってるね。最後がYなのがIになってる。」
 始めに『例の』、とかかれているので、これ把握までアレなサイトのパスワードなのだと何となく察しがついた空だったが、しかしパソコンに一応パスワードを打ち込む。結果は案の定、『パスワードが間違っています』だった。ベリーのスペルを正しくしても、それは変わらない。
 「ぐぐ…良い案だと思ったけどなぁ」
「…悠太くんの側にパソコンを調べてた時いた、アリスとか知ってないかな?」
 パソコンを一旦閉じた空は左のアリスと光を見る。アリスは体育座りで耳を抑え、何かに怯えている。光は立ってアリスの側にはいたが、どうすれば良いか分からない故に、空と目があった瞬間二人を手招きした。
 「光」
「正、空。」
 光は二人が来るなり始めに正珠、続いて空と、二人に簡潔に耳打ちした。
 「私、どうすれ、ば良い、か、分からない。ずっと、悠太、探してる。怖がって、る。」
「…………光、アリスの側にいてくれてありがとね。」
「それより、どうする。」
 正珠は弓子の連絡先を打った携帯を、急遽悠太の連絡先へと変更する。駄目元で電話をかけて見たが、さっきと変わらず出なかった。
 正珠はこういうとき、どう接すれば良いか全く分からなかったために光に任せっきりにしていたのだが、光も自然とそばにいる選択をとったものの、今後どうすれば良いか、分かっていなかったのである。
 が、いつまでもこれではいけないとパソコンのことも忘れた正珠はしゃがみこみ、アリスと向かい合った。
 顔は青ざめ、瞳孔は揺れ、呼吸は荒く、震えている。正気の色はなく、なにより金髪少女は限界が近かった。


 ――このままじゃあ、壊れてしまうよ。
 声がした。
 ――何とかしなきゃ。

 正珠は無意識に、まっすぐ、手を伸ばした。

 「……アリス」
「……なんで……どうして」
「アリス……」
「ユータが、私を、なのに、私は、でも、でも…私は、…?」
「アリス!」

 気がつけば、正珠はアリスを抱き締めていた。跳ねすぎた紫色のサイドテールが、ふわりと風に浮く。
 「…………!」
 正珠は更に、金髪の艶やかで柔らかい髪ごと頭を撫でる。
 淡い紫の光が、正珠の目蓋の裏でうっすらと見える。瞳を閉じた正珠は、ただ一心不乱に撫でてやった。大丈夫だと呟いて。

 「大丈夫、せーじゅが何とかするからね。仲間がいるよ。」
 側の光も立ち尽くしたまま、ポツリと聞こえるかわからないほどの声量で呟く。
 「ん。だいじょぶ、だよ。」
 ただひたすらに不器用で、垂直で、真っ当で、精いっぱいの表現法だ。

 「あ…」
 刹那、アリスの瞳に少しの光が見えた。
 「あ、れ…?」
「アリス」
「私、今まで何を…あ…そうだ…ユータ…」
 不安そうな声に光はおろおろしたものの、まだ抱き締めていた正珠は、アリスの心臓の鼓動が段々ゆっくりしていくことに気がついていた。
 「…………ありがとう、正。それにごめん。立ち止まらないって、決めたのに…」
「いいよ、そんなの!皆で、支えあえばさ!それより、アリス…」
 心配そうに正珠が聞きそうになると、アリスはふわりと笑う。
 そこには、ずっと明るく振る舞っていたアリスとも、ずっと怯えてたアリスとも違う、正珠達の知る、いつもの少女がいた。
 「心配かけたね…ずっと、ここじゃないどこかで…私は生きてないようで…ユータだけが光で…テンションもおかしくて…自分で制御できなくて…ユータがいなくなったって知った時、誰も見えなくなって…」
 そこでアリスは立ち上がり、座り込んでついた細かな埃を払う。
 「でも…目が覚めたみたい。皆が見える…不思議だね。」
「うん…」
「無理、禁物。」
 光はアリスへ一歩、二歩と近づき瞳をじぃっと覗き込んだ。
 「あはは、ありがとう、光。うん、気を付けるよ。もう大丈夫。」
 そこには弱々しくも立っているアリスがいる。
 ――一件落着、かな?
 正珠は安心した笑みを浮かべると、自分がアリスに聞こうとした事を思い出す。
 正珠が口を開いた時、ほぼ同時にアリスは空の方を見た。
 「空も心配かけたね。もう大丈夫だよ。」
「…………」
「空?」
「…あ、ごめん、…ってあれ、アリス、もう大丈夫なの?」
「あ、うん!ほら、元気満帆じゃないし、ユータ立ちは心配だけど…皆がいるなら安心できる。立ち止まってもいられないしね!」
「そう…」
 空は語尾の弱い相槌を打つと、ぐるぐるとまた思考の中へ潜っていった。
 「空、どうしたんだろ?」
「さあ。」
 正珠と光は空を観察するが、そこにはアリスが正気を戻した事に対する歓喜より、ずっと別の何かに頭を悩ませている姿だけがあった。
 それがあまりに他人を寄せ付けない雰囲気だったため、正珠は改めてアリスに向き合った。
 「あ、そうだ、アリス。大のパソコンのパスワード、知らないかな?」
「パスワードはパソコンの裏に…」
「それ以外ので」
「……確か…」
 アリスはパソコンに向かうと、素早くキーボードを打つ。
 「わあ、早い…」
「文字打つのは得意だから。おっ、合ってたみたいだ!」
 正珠と光が駆けつけたときには既にパソコンはホーム画面だ。
 「ありがとう!アリスのお陰でなんとかなりそうだよ!」
「なんとか…?あとで説明してね」
「はーい!!」
 正珠は早速椅子に座ると、パソコンのキーボードをテンポよく打つ。こうすることで、正珠はいつもよりか作業効率が上がるのだ。
 光は笑った。
 ほんの少し、口許を緩めて。
 しかしすぐに真顔に戻ると、後ろで悩む空を今度は無表情で眺める。心の中は、心配と警告の色があった。
 「…アリスは、悠太の、魔法、解けた。空は…魔法、まだ解けない。」
 魔法なんてものは存在しない。そう否定できない光は、二人にかけられた、類似性のある『ある事』を『魔法』と形容する。それぞれ王子様と、お姫様がかけた魔法だ。
 「私、どうしよ。」
 ずっと誰かに言いたい。けれども言えない。
 総が感じた光の違和感は、それほどまでに光自身をずっと、もどかしくさせるものだったのだ。
 空と光は目があった。
 「あ…どうしたの?」
「…なんでもない。」
 フイッと目をそらすと、光は気がつけば誠に会いたくなっていた。
 ――なんとなく、『少しだけ遠くにいる気がする。』
 そんな思考は、しかし正珠に名を呼ばれたことで吹き飛んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

結婚三年、私たちは既に離婚していますよ?

杉本凪咲
恋愛
離婚しろとパーティー会場で叫ぶ彼。 しかし私は、既に離婚をしていると言葉を返して……

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。 反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。 嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。 華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。 マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。 しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。 伯爵家はエリーゼを溺愛していた。 その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。 なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。 「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」 本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...