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Chapter3.竜

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もう後ろのオネーサンを構ってる場合じゃない。

だから、オネーサンは無視して男たちに近づいた。



「先に手を出したのはそっちだから、これは正当防衛っすよ?」


「…………は?」


「だから、正当防衛」



そう言って、俺を殴った奴に殴り返した。







***






結局


威勢がいいだけのオニーサンたちで


あれから俺は一発も食らうことなく


オニーサンたちは道路に転がった。




「これに懲りたらもうあの人に絡まないでくださいよ………はーっ、めんど」



ため息しかでないって、本当に。



オニーサンたちを見下しながら言ったら相当怖かったのか

全員、顔ひきつってるし。



あのオニーサンたちが一斉にかかってくるとかしたら状況は違ったんだろうけど……これが、経験の差かな?




オニーサンたちに背を向けて

ようやく帰れるって思ったのに…………



少し先で待っていたんだよ、オネーサンが。




いや、マジで帰っててほしかったんだけど………。



「あ、っ、あのっ!」


俺が近づいたらオネーサンから声を掛けられて

さすがに立ち止まるしかなかった。



「助けていただき………ありがとうございました」


ピシッとした動きで頭を下げられて

結構、驚いた。


初対面であんな喧嘩腰な人が

俺相手にキチンと謝るんだ……って。



「いえ……別に……」

「別にって、殴られていたし……それに………」


オネーサンはまごまごした様子だし


俺は早く家に帰りたい。


だから、もう話は終わりにしよう。


「本当に気にしないでください。
この辺、治安良くないんで早く帰った方がいいですよ。
じゃあ、俺はここで………」


俺は帰ろうとした。

帰りたかった。


「ま、待ってください!
あの……非常に申し上げにくいのですが………」


なのに、オネーサンによって止められた。






「じ、実は……道に迷ってしまいまして………ここは、どの辺りでしょうか?」




……………は?

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