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CASE17 アゲハの選択

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「最後に、俺自身の話だけど……」


アゲハが自分が新人類になった事を説明して

そこでようやく、お母さんたちはアゲハが生きていられた事に納得していた。


だけど


「とにかく今は早く病院に行きましょう!」


おばさんは新人類を知らないから仕方ないけど

今すぐに病院に電話しそうな勢いだった。


「だから、俺は人間じゃなくなって……こうなってるから、病院には行けない」


アゲハはキッパリ断って

服を脱いで核を見せた。


赤かった核は真っ黒に変わっていた。


破壊者の皇帝にやられた時とは違う黒さ……今は明らかに停止してるって感じ。


おばさんは核を見て小さく悲鳴をあげて

おじさんとタイヨウくんは驚きすぎてフリーズしていた。



「黒いね……」


「ね。やっぱりこっちじゃ、核は動かない」


私が手を伸ばして核に触ったら、すごく冷たかった。


「動いてないから、冷たいのかな?」


「たぶんね。……こんなの身体にある人が病院に行ったらどうなるか………。だから、病院には行けないよ」


病院に行けない=薬が手に入らない

薬が手に入らない=アゲハが生きていられない


だから、おばさんたちは絶望的な気持ちになっていると思う。

でもアゲハだけはずっと穏やかな様子。


「コレ、戻って動かなかったらどうしよう……」


って、いきなり言い出した。


戻って……?


その言葉に違和感を感じて桃華を見たら同じように感じたみたい。


「アゲハくん……ユートピアに、戻る、の?」


桃華が聞いたらでおじさんとおばさん・タイヨウくんは目を見開いて

アゲハはすまなそうに笑った。



「………うん、帰るよ」


静かに言って、アゲハはさっき渡した箱を触っていた。

大事そうに両手に持って、おばさんたちの方を見たアゲハは


「薬がある限りは、こっちにいる。けど……薬がなくなれば俺は向こうの、異世界に戻る」


ハッキリと言い切った。


「だって俺、肉体年齢的にはもう寿命だし、薬は限りがある。向こうに行けばコレのおかげで生きていられる。………俺は生きたい。死にたくない。俺が生きてないと、この人たちは悲しむと思うから、、」


箱を開けてアゲハが取り出したのは、小さな小瓶。

中に骨が入っていて……これってやっぱり


「その骨は……レオン?」

「正解。レオンとエドガーは、俺がいた世界に連れてこれたよ」


箱の中にはもうひとつ、灰が入った小瓶と手紙。





私たち中でアゲハだけは最後までずっと、穏やかな様子だった。





**********




アゲハは家族に連れられて帰っていった。


アゲハは『ユートピアに帰る』という選択をした。


アゲハのことだから……絶対に言い出したら聞かないし、生きるためにはユートピアに帰るしかない。



じゃあ、私は……?


私はここで、日本で、暮らす?


それが当然の選択かもしれない。



けど、、、



私は


私は………



両親に捜索願は出したままにしてほしいって、お願いした。


私はまだ世間的には行方不明のままでいることを選んだんだ……。


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