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CASE16 世界が終わるまで

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**********



夕方になってアゲハが起きるまで

私はアイリーンさんの手伝いをして過ごしていた。


別にやる事はないし一人じゃみんなのいる場所には行けないし……。


この、一人じゃどこにも行けない感じ、が、この世界じゃもどかしくって


だからアゲハは努力して移動できるようにしたんだろうけどさ


……努力してどうにかなるモノじゃないよね?


凄いなぁって素直に思うよ。


ちょっと前までは、、生きてるだけで精一杯だったのにね。



「きっとね、ギルバートくんたちはここに集まるから。だから、お夕飯作り、手伝ってくれるかしら?」


アイリーンさんの読み通り

アゲハが起きるより前にギルバートさんたちがやってきて


みんな、やっぱり最初に確認するのはアゲハだった。


「ホントにみんな、アゲハが好きだよね」


「ゼロほどじゃねーよ」


レオンには笑って否定されたけど、みんなアゲハが好きなのは間違いなし。


ただね、みんな、妙に顔が強張っていたから……何かあったんだと感じた。





**********




アゲハが起きてみんなで夕飯を食べ終わった頃


なんとなく……空気が変わった。



これから真面目な話をしますよって、そんな空気。


そんな中、私は絶対にギルバートさんが話し始めるって確信があったから、、ずっとギルバートさんを見ていた。

しばらくしてからギルバートさんと目があって、それからギルバートさんの視線はアゲハに移った。

アゲハもずっとギルバートさんを見ていたから、目があったらお互い頷き合っていた。


 「………アゲハとソラはあの場にいなかったから説明するが、いいか?」


「もちろん」

「お願いします…」



声のトーンが真面目だったから、背筋を伸ばして話を聞く体勢を作った。



「星将軍の情報だが、、破壊者も救済者も今は“救済者の皇帝”の居城にいるらしい。滞在期間は長期を予定していて、救済者の支配地域一帯を壊すのが目的。向こうはいよいよ全てを終わらせるつもりらしい」



ギルバートさんの言葉は頭に入ってきたけどさ


もう、時間がないって事?


私は心のどこかで世界が終わる……そんな日がこないんじゃないかって思っていたけど、、


ついに、終わりを迎えようとしているんだね、、、


素直に……怖い、ね、、、



「止める……つもりだよね?」


恐る恐る聞いてみたら、ギルバートさんは頷いた。



「当然だ。だが、その情報は星将軍からの物だ。地図や人員についても……信用に足る情報とは言い難い」


 ハッキリと言い切ったギルバートさん。

そりゃまぁそうだよ。

星将軍は味方じゃないもん。



「だから、探りを入れる。調査に行くのはミオ・イブキ・ミレイの三人で、」

「駄目。俺が行く。そうしたらイブキとミレイは不要でしょ?」



ギルバートさんの言葉を止めたのはアゲハだった。


アゲハは怖い顔でギルバートさんを見ているんだけど


ふと、視界の端で誰かが手を上げたのが見えた。



「アゲハさん、俺は自ら志願したんです。だから、俺の役割取らないでよ……」


手を上げた状態で発言したのはイブキ。


イブキは困った顔でギルバートさんとアゲハを交互に見ていた。

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