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CASE14 私の記憶

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正直、私が「早く記憶を取り戻したい!」って言えばアゲハさんも簡単に考えが変わったと思う。


だけど、アゲハさんがトラウマと向き合えるいい機会かな?って思ったから、みんなに任せる事にした。


そうなると必然的にこの場ではアゲハさんの訓練ができないから、お店は休業にして私共々移動する事になった。



着いた先はエドガーさんの家。


レオンさんとアゲハさんは着いて早々地下にある部屋に向かって

私はエドガーの奥さんと過ごしていた。



奥さんのアイリーンさんは優しくて美人で……私に料理とか教えてくれた。



毎日毎日、アゲハさんはひたすら地下にある訓練場みたいな部屋に籠もってて、出てくると大体傷だらけ。


そんな日々を一週間過ごすと、アゲハさんの特訓に付き合う人がいつの間にか増えていて、なのにアゲハさんの怪我は減っていった。



そして、更に一週間後、アゲハさんたちレジスタンスの幹部の四人が出掛けて

三日後に、帰って来た。



「ただいま。待たせたね」


アゲハさんが包帯だらけの手で私に手渡してくれたのは、小さな箱。


この中に、私の記憶が入っている……ーーーーー。




**********




アゲハさんだけじゃなくて、レオンさんとゼロさんもまぁまぁ怪我はしていて


手当てをしたり休息を取ったりしている中、私は一人でアゲハさんに渡された箱を眺めていた。



中身を頭に近づけたらいいって説明されたけど、中身は不思議な透明な塊。

触ると柔らかいけど、潰したらヤバそう。。。



いつ、どのタイミングで私はこれを使うんだ……?

勝手に試すのもなぁ~…って思っていたら、リビングにレジスタンスの幹部が戻ってきた。



思ったより元気そうだけど、これが私の手にあるって事は

人をひとり、殺したんだって事だよね……?


殺人が罪に問われる世界じゃないって学んだけど……やっぱりね。気持ち的にダメージは大きいよね?


怪我具合的にはアゲハさんが一番多いから、アゲハさんが……って、思うんだけど

アゲハさんが一番……元気そうなんだよなぁ、、、



色々グルグル考えている時

目の前に、アゲハさんが来た。



「試してみる?記憶が戻るかどうか」


「……はい。やってみます」



ちょっと怖い気もするけどね。


早く、記憶を取り戻したいから。。。



エドガーさんに「倒れたら困るから!」って強く言われてベッドに強制的に寝かされて

仰向けになった私の顔の真上には、透明な塊を持っているアゲハさんの手。

とりあえず怖いから、目を瞑って待機した。


「行くよ?」


アゲハさんが声を掛けてくれてすぐ

何かが頭にヌルッと入ってきた。



次の瞬間、色々な情報が一気に頭に流れ込んできて、、、

気持ち悪さと頭の痛さでどーにかなりそう…っ!


私は……


私は………!!








船酔いみたいな、そんな感覚で気分が最悪な中、目を開けた。


目の前にはたくさんの、、私が良く知る人の顔。



「空……?」



そんな中、誰よりも一番心配そうに私を見ている人、、、



絶対に……忘れたくなかったんだけどなぁ、、、



私にとって、大切な存在だから、、、



「心配かけて、ごめんね……アゲハ」



私の一言だけで全てを理解してくれたみたい。



「いえいえ。おかえりなさい」


「ただいま」



おかえり、私の記憶。


今まで記憶がなかった時の事も全部、私は覚えているよ。
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