上 下
260 / 342
CASE12 異世界からの来訪者

3

しおりを挟む

**********




私の嫌な予感って、大体当たるんだよね。



四人での生活が始まった日から、アイさんとアゲハは呼び捨てで呼びあう仲になって

アゲハの後ろをアイさんが追いかけてる………ように、私には見えた。



私とアゲハが話しているとあからさまに嫌な顔をするし、間に入ってくるし……。


そんな私とアイさんの関係を気にしてか、レオンはアゲハに家にいるように頼んでくれて

アゲハは最近では珍しく家にいる時間が増えた。



だから、お店を開けるとやっぱりアイさんはアゲハにくっついて色々と手伝っていて、、、



別にね、いいんだよ?


アイさんがアゲハを好きになっても。


アゲハがアイさんを好きになっても。



ただね、あからさまに私に敵意を向けてきたり

アゲハにベッタリでご飯とか家の事、全くしてくれなくてね……。


いい加減、私が限界。





一緒に暮らしはじめて一週間が過ぎて


今まで夜はアイさんと同じ部屋で寝ていたけど


はじめて、アゲハの部屋に向かった。



ドアをノックすると返事があったから起きていて

部屋に入ると本を読んでいたみたい。



「ごめん、邪魔した?」


「全然。どうしたの?空から部屋に来るのは珍しいね」


アゲハが眠れない日はだいぶ減ったから

今では別々で寝るのが当たり前になっていて

だから、夜に部屋を訪ねるのはかなり珍しい。



「話、したくて」


「ちょうど俺もそう思っていたところだよ」


アゲハの部屋は、ベッドが二つ、並んだまま。

エドガーや他のみんなが泊まるときはアゲハの部屋を使っているから、このままにしている。


だから、二人でベッドに並んで……でもお互い上体は起こしたまま。



「それで?どうしたの?」


アゲハは、私が先に話すように促してくれた。

私がね、『アイさんとうまくやれないからどうにかして』なんて言ったらアゲハはすごく、困ると思う。

だから、、、


「ちょっと、、桃華に会いたくなったから、ニャンさんたちのところにいるなら連れていってほしいなぁ……数日間」


もっともらしい理由を付けて、数日間離れようと思ったんだよ。



「え?それは駄目」



………え?


結局あっさりとOKされると思ったのに?


今までもたまに桃華に会いに行った実績あったのに??


思わずアゲハを見たら、アゲハは苦笑いで、ハッキリと言った。



「俺が今、かなり無理してるの。空がいないと死ぬよ、精神面が」


そう言って頭をガシガシと掻いてから小声で話し始めた。


「アイは、可哀想な人だと思う。知らない世界に一人で来て、誰が信頼できる人かも分からない状況は…俺も経験したからね。
だから、アイが信頼できる人として俺を選んだなら、アイが少しでも心穏やかに暮らせるように……って思って俺なりに頑張っていた」


「四六時中一緒にいるもんね、今」


「それはアイが『一人になるのは不安』って言ったからね。『同じ部屋で寝たい』って言われたのはさすがに拒否したけど、起きてから寝る直前までずっと一緒………」


そこまで言って、アゲハは大きくため息をはいた。


「俺に好意を寄せてくれる年上の女性………ちょっと無理なんだよね、気持ちの問題で。あの女の影がチラつくから」


………アゲハに、嫌な事を言わせたなぁって、ちょっと後悔した。


最近はずっと調子良かったし、気にしている素振りもないから大丈夫になってきたかと思ったけど……駄目だったのか、年上の女性。


「だから、空がいないとこの家で二人っきりでしょ?俺が耐えられないんだよ。だから、申し訳ないけど今は駄目」


アゲハの表情が本気だったから


結構淡々と話しているけど実は相当無理してるんだって、実感した。


アゲハがアイさんを好きになっても……って、思ってごめんね。。。
しおりを挟む

処理中です...