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CASE11 心の中
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私とアゲハ、それから、レオンとエドガーの四人でエナメの町に戻ったんだけど……
この日からしばらく、アゲハはずっと精神面で不調が続いた。
その間、ギルバートさんたちはヒズィの水問題に取りかかっていて、終わりが見えてきたらしい。
ずいぶん早く終わりが見えてきた背景には、ヒズィの町の人が協力してくれているからだって。
アゲハと一緒にヒズィの町に戻ったのは、アゲハの心の中を見てから10日後。
だいぶ調子が戻ってきたし、身体も動かしたいっていうアゲハの希望もあってヒズィの町にまた来た。
「アゲくんソラちゃん来たねーっ!!見てよーっ、ちゃんと水路もできたんだよ!?」
スーにアゲハと私の手をグイグイ引っ張りながら連れていかれた先は
ものすごい広い貯水池と、水路。
水がないから変だけど。
「すごいね。ここまで大変だったよね……みんな、ごめんね…俺のせいで、、」
アゲハは辺りを見渡してからみんなに向かって頭を下げた。
「やめてよ。謝らないで。私たちはやりたくてやったの!謝るくらいなら『ありがとう』って言ってよ」
ミレイはいつも通りな雰囲気でアゲハに言ったから
アゲハもいつも通り、ミレイに向かって笑いかけた。
「分かった。……みんな、ありがとう」
アゲハがみんなにお礼を伝えた時
ヒズィの町のボスとギルバートさんが一緒に現れた。
「アゲハ、やれるか?」
ギルバートさんに聞かれたアゲハはニヤリって笑ったんだけど……ものすごく自信がありそうな顔。
「アゲハのあーゆー顔、久々に見た気がする」
ルーラがそう言うくらいだから、相当久しぶりに見せる顔なんだろうね。
「ギル、俺を誰だと思ってるの?みんなの努力を無駄にするわけないでしょ」
「お前……言うようになったな」
ギルバートさんはちょっと小突いて、それからアゲハひとり、みんなが掘った貯水池の中央に向かった。
しゃがんて地面に手をつけたまま、アゲハは動かなかったけど……
貯水池の周りの地面が、、小刻みに揺れた気がした。
次の瞬間
貯水池の中央から水柱があがって………アゲハが水に飲み込まれた……!?
「えっ!!?」
私も、他のみんなも、周りにいた人は全員前のめりで貯水池を見ていたら
水柱からアゲハが飛び出してきて……そのまま地面に落下した。
「ちょっと!!大丈夫!!?」
慌てて駆け寄ると脇腹を押さえながら顔を歪ませてはいたけど……
怪我はしていないっぽい。
………びしょ濡れだけどね。
「失敗した……。風を使ってこっちに行くために飛んだらさ、、脇腹がビキッて痛くなって一瞬意識飛んだ……。あーっ、いっったいっ!!」
うずくまっているけど、喋る元気はあるみたいでホッとした。
もうアゲハも私も怪我の数々はだいぶいいけど……アゲハの方が重傷だからね。
気づくと町の人を含む大勢の人がアゲハを取り囲んでいて
アゲハは顔をあげた時に周りを見て笑った。
「ちょっと……俺より貯水池の方を見てよ。そっちがメインでしょ?成功したよね?」
アゲハに言われて町の人はバラバラと動き出して貯水池を見たけど……ちゃんと、水は貯まってきているし、水も綺麗っぽい。
「よかった……みんなの努力を無駄にしないで」
アゲハも貯水池を見てかなりホッとした様子。
そんな時、誰かがアゲハにタオルをかけた。
アゲハと私が同時に振り向くとそこにいたのはヒズィの町のボス。
「ありがとう。これで水に悩まされる事はなくなりそうだ」
ボスはアゲハの隣に来て、貯水池を見ながら口を開いた。
「この貯水池は、町をあげて必ず守る。そして……ヒズィの町は、あなた方レジスタンスに従おう。救済者の世界になっても未来はないと、教えてもらったしな」
ボスの言葉はレジスタンスにとってはありがたい言葉。
近くにいたレオンが静かにガッツポーズしていたのが見えた。
「これから……良い関係を築こうじゃないか」
ボスがそう言ってアゲハに握手を求めて
アゲハは笑顔でそれに応えていた。
みんなの努力とアゲハの努力
今日は、どちらの努力も実を結んだみたいだね。
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