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CASE11 心の中

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「………ねぇ、エドガー、、聞いてよ」


しばらくしてから、アゲハがエドガーに声をかけて

エドガーはずっと頭を撫でていたのをやめた。



「空がね、俺のこと……“ファザコン”だって、言ったんだよ……否定は、できなかった、、」


「ふぁざこん?とは??」


エドガーは聞き覚えがない単語だったみたいで、聞き直していた。


「父親に強く依存してたり父親が大好きな子供の事だよ」


私が代わりに答えたら、エドガーの笑い声が部屋に響いた。

夜だから声は小さめだったけど、静かな部屋にはよく響く。


「つまり、私がアゲハにとっての父親になれてる……と、思っていいんだよね?」


「当たり前でしょ……いまさら、聞くの?」


そう答えたアゲハは上半身を起こして、エドガーの方を向いた。


「だから、今日はちょっと……寂しかった、、、ごめんね、エドガーを困らせて……」


アゲハの言葉を聞いたエドガーも上半身を起こして

それから、両手でアゲハの頭をぐしゃぐしゃにしていた。


「アゲハが謝る必要は、ない。今日はすまなかったね、、ちょっと私が荒れていたんだ……だいぶ頭は冷やせたから、もう大丈夫だ。起きたら改めて色々な話をしよう」


「……本当に大丈夫?酒臭いから……起きたら忘れてるとかない?」


「大丈夫だ…………たぶん、、」



………最後!

いい話の流れで思いっきり不安な一言を付け加えていたよね!?



ただ、アゲハはエドガーが来たことでだいぶ落ち着いたみたい。

またベッドに潜り込んだ時に顔を見たらずっと笑顔。


さっきまで泣いていたのに……エドガーって凄いね。

エドガーがいたらアゲハは元気になるんだもん。




「ねぇ、エドガーも早く寝よう?」


ベッドに入らないエドガーに向かって声をかけたけど


「……二人が寝るまで起きていたいんだ」


私とアゲハが寝るまで?


それはちょっと………寝にくいなぁ、、




「エドガーに見守られてれば、安心だね」


そんな私とは真逆だったのはアゲハ。



それから少し話をして、先に寝たのはアゲハだった。


「帰したくないな……家族の元に」


エドガーがボソッと呟いた言葉。


思わず目を開けてエドガーを見たら私が起きているのが分かったのか目があった。


「選ぶのは自分自身……って、分かっているが……。このまま一緒にいられたら……って、よく思うんだ」


「アゲハはきっと……この世界が平和になれば日本に帰る事を選ぶけど……またこの世界に戻ると思う」


「それは、なぜ?」


「だって……この世界にはアゲハを必要とする人はたくさんいる。家族同然の人たちもいて、当たり前に私と同じ生活ができる。でも、元いた世界だと……走ることもできないし、寿命がきちゃう……」


この世界が平和なら

アゲハはきっと、この世界に留まる方が幸せだと思う。


アゲハのおじさんとおばさん、それからタイヨウくんに会えない事を除いては……だけどね。



「きっとソラたちの世界でも同じだろうけど……子供は親より先に死んでほしくない。だから、アゲハも……、、、だけど、このままだとアゲハのご両親が可哀想だな。私も人の親だからね、急に子供がいなくなったりしたら、絶望するよ」



エドガーはアゲハを息子のように可愛がっていて、アゲハにはずっとユートピアにいてもらいたい。


だけど、アゲハの両親の気持ちも、親としては分かっちゃう。



アゲハはどっちを選ぶのかな?

ユートピアと日本。



私は、日本に戻るを選ぶだろうけど……

アゲハがユートピアを選んだら?


私は桃華と二人で……日本に帰るのかな?

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