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CASE11 心の中

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朝食の時はずーっとエドガーが喋りっぱなしで

二日酔いは気のせいだったかな?ってくらいとにかく元気だった。


アゲハはニコニコしながら話を聞いているし、ギルバートさんも普通にたまに相槌を打ってる感じ。



「今日って何時に帰る?」


って急にアゲハがエドガーに聞いて


エドガーは時計を見てから「あと1時間後かな?」って答えていた。



「じゃあさ、帰る前にギルと二人で話がしたいんだけど……ダメかな?」


「駄目な訳ないだろ。食い終わったら部屋を変えるか」


「うん、ありがとう」



ギルバートさんと二人って言ったから、エドガーはちょっと寂しそうだったけど、、


なんとなく、昨日の夜の話なんだろうって、、私は分かったよ。




それから二人はいなくなったけど、そんな時間はかからずに戻ってきた。


ちょっと険しい顔をしたギルバートさんと困り顔のアゲハだったから、すぐにエドガーが声をかけた。


リビングの三人掛けのソファにギルバートさんが座って、ギルバートさんの隣にアゲハが座った。


その位置が、エドガーの正面。


「空も一緒に話を聞いて?」



アゲハにそう言われて私はエドガーの隣に座ったけど……


ちょっと沈黙が、、苦しい。



「アゲハに頼まれたんだ……“自分の記憶を見てほしい”……と。それには俺たち幹部・レジスタンスの中で希望する人…それから、ヒズィの町の人が望むなら町の人も、だ、そうだ」


それは、やっぱりニャンさんがやった事と同じこと。

ただ、昨日の話だと………


「アゲハ……それってアゲハにとって悪い事もあるんじゃないの?」


「あぁ、私もそこを聞きたかった」



私もエドガーも、やっぱり気になるのはそこで、、


ギルバートさんは「もちろん」ってあっさりと認めた。


「自分の精神、心に他人が干渉するんだ。干渉された本人の負荷は確かにある。……俺一人ならまだ負荷は少ないが、、人数が増えるほど、本人への負荷は大きい」


「負荷は……どんな感じなの?」


ギルバートさんに聞いたけど、ちょっと沈黙があって……

それが逆に不安を煽ってきた。



「コップの中に油と水が入っているとして……油が上で水が下だろ?記憶もそんな感じで新しい記憶といい記憶は上、嫌な記憶は下にいくんだ。
アゲハが見せたい記憶は“救済者にいた時”の記憶だから、もう嫌な記憶として下にあるだろう……。
そして、、その油と水が入ったコップに砂をひと粒落としても変化はないが、石を何粒も落とせば油と水は一時的に混ざる……」


「つまり……悪い思い出といい思い出がごちゃまぜになる?」


「そういう事だ。思い出したくない事も鮮明に思い出す羽目になるだろうから、、」


ギルバートさんが言葉を続けようとしたけど

エドガーがテーブルをバンッて叩いて立ち上がった。



「そんな事……認めるわけがないだろ…」


エドガーが静かにそう言ってギルバートさんを睨んでいた。


「エドガー……ギルを責めないでよ。俺が頼んだんだから……思い出せない記憶があるかもしれないし、それがあればみんなのためになるかも知れないでしょ?」



アゲハはエドガーにそう説明したけど

全くエドガーは聞く耳を持っていなくて、そのまま席を離れてしまった。

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