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CASE10 傷痕

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「ごめんね!泣いちゃって!!」


すごい泣きまくった桃華は一人めっちゃスッキリした顔をして、アゲハの目の前で冷たいお茶を笑顔で飲み干した。


「桃華さん元気そうで良かったよ」


「アゲハくんは死にそうな顔色してるね!」



……桃華に悪意はないはず。


だけど、笑顔でそんな事言うなよっ!



「よく来たね。ゼロがここに誰か連れてくるとは思わなかったよ」


「あー、うんっ!『私も行きたい!』ってめっちゃ駄々をこねたらOKしてくれたの!」


「へぇ……めっちゃねぇ、、」


チラッとゼロさんを見たら嫌そうな顔。


「誰も止めてくんねーから仕方なく連れてきた」


「そうそう!スーもねっ!『いいぞ、もっとやれ』って言って応援してくれたんだよ!」


「………なんだろう、、すごい目に浮かぶのは、、、ゼロ、お疲れ様」


ゼロさんはウンウン頷いてから、いまだにうるさい二階に上がった。




「みんなは元気?」


アゲハが桃華に聞いたのを皮切りに

桃華のマシンガントークが開始された。


とりあえず、みんな元気だって事は伝わったし、アゲハも楽しそうだったから良かったよ。


会話の最中に今朝のリンゴを出したら、桃華がふと言ったんだよ。


「アップルパイ食べたいな」


って。



「そういえば、こっちの世界に来てから食べてないかも。アップルパイ」


「ねっ!!ずっと食べてないとさぁ、食べたくなるよね!!」


「……じゃあ作る?」


アゲハの提案に、桃華と顔を見合わせた。

材料があれば作れそうだけど……そんな女子力高いデザート、作ったことないよ。


椅子から立ち上がったアゲハはキッチンに行ってそこにある食材を色々見てた。


「…怪我痛いのかな?歩くときゆっくりだしお腹に手をあててたし、、」


「……結構重傷だからね」


「なんか……悲しいね」


アゲハに聞こえないように二人でコソッと話した。

桃華はアゲハの前だと明るく話していたけど、、心底心配していたんだろうね。


キッチンを見終わったアゲハは慣れた様子でメモ帳とペンを持ってきて、サラサラと書き出した。

一連の動きがあまりに自然だったから、、、

ずっとこの家にいなかったのは嘘みたい。



「空ごめん。これ、レオンに渡してきて買ってきてって伝えてくれない?材料があればレシピは頭の中にあるから指示出すし……だから、作れるよ」


…やっぱり作れるんだ、アゲハって。


毎年渡すバレンタインのお返し、必ず手作りなんだもん。

女子力めっちゃ高いんだよね。




二階に行ってレオンに紙を渡して説明したら、三人の顔色が変わった。


「アイツがさぁ、、作るモンって今まで食べたことないモンばっかなんだよなぁ」


「しかも…うまい」


「いやぁ、楽しみだねぇ!俄然作業にやる気が出たよ!」



三人とも、嬉しそうなんだけどね……


私の目の前にはバラバラに分解された私が使っているベッド。


なんでこうなってるの??
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