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CASE10 傷痕

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アゲハが泣き止まなかったら「いつまでも泣いてるんじゃねーよ」って言ってまぁまぁ強めに頭を殴ったゼロさん。

それから座っていた椅子に改めて座り直して、アゲハの様子を伺っていた。


アゲハは「頭痛い…」って頭をさすりながら小声で言ってて、表情や態度からさっきよりだいぶ落ち着いたように見えた。


人が辛いときはずっとただ傍についているだけじゃ駄目なんだって、ゼロさんに教わったよ。


レオンが改めてお茶をいれてくれたんだけど

甘い温かい飲み物を用意してくれた。


「ゼロが叫びすぎたからノド労らなきゃだろ?」


ニヤニヤ笑いながらゼロさんにお茶を渡してて、ゼロさんは思いっきり睨んでいた。





「こう………なんて言うかな?悔しいな、ゼロがムカつく」


エドガーもお茶をもらって一口飲んで。

低めにそう口に出したから、ゼロさんの睨みはエドガーに移った。



「は?いきなり何?喧嘩売ってる?」


「いいとこ全部持っていってくれたよね?私が言いたい言葉、全部先に言ってしまうから………そんなにゼロがアゲハを好きだとは知らなかったよ」


エドガーも負けじと睨み返したら、とたんにゼロさんは目を逸らした。


それどころか……顔が赤くて……



「認めなよ、アゲハが大好きだって」


「ソラ!うるせぇな!!別にっ、好きって……恋愛感情は持ってねーよ!」


………いや?

私は人として好きについてを語ったつもりなんだけど?



「恋愛感情持たれたら……本気で無理」

ポツリとアゲハが拒否したから、レオンは爆笑していた。



「当たり前だろ!俺だって男と恋愛は無理だ!人としてアゲハが好きってだけでっ!………あ、」


勢いよく発言していたゼロさんが突然失速。

理由は、言うまでもなく………で、エドガーとレオンが悪い顔をしてニヤニヤ笑っていた。


二人のこういう顔、久しぶりに見たかもしれない。



「そうだよね、ゼロ。キミがアゲハを好きなのは、よく知ってる」


「どさくさ紛れでようやくアゲハを名前で呼べるようになったしなぁ!」


「俺は前から名前で呼んでた!」


二人にニヤニヤ笑いながら言われたゼロさんはキッと睨んで言い返していた。

………絶対に、嘘だけど。



「アゲハがね、自我がない状態でもゼロに名前呼ばれて反応しちゃったんだから……だから普段は名前で呼んでいなかった」


エドガーはさらりと言ったけど、エドガーもあの時アゲハが何に反応したのか気づいていたんだね。

名前を呼ばれたアゲハ自身はきょとんとしているから、やっぱり覚えていないんだね。



「えっ?いつの話だ?」


レオンはあの時のアゲハの様子、気づいていなかったんだ。


「アゲハと戦う前。花将軍のうんちくを聞かされてる間。ゼロさん花将軍に怒りながらアゲハの名前を呼んだ時。アゲハの表情が、ちょっと変わったよ」


私が代わりに答えたけど、アゲハも驚いた様子だった。


「やっぱり、覚えてない?」


「うん……空を斬った瞬間まで……この核になってからは、、ほとんど覚えてない」


アゲハはちょっと気まずそうにしているけどね、

だけどこれ、そんな気まずい話じゃないよ?


「だったら尚更すごいね。ゼロさんに名前を呼ばれたって事がそれほどアゲハにとって衝撃ってことなんだから」



「………ただし、自我を取り戻すほどの衝撃はなかった。ってオチを作ってくれるのがゼロらしいよな!」



私がいい事を言ったはずなのに!


レオンの言葉でかき消されたよね!?


「お前らなぁ……」



ゼロさんが何か言いかけた時

ふふふって楽しそうな笑い声が隣から聞こえてきて


全員、私の隣に注目した。



私の隣には、楽しそうに笑っている、アゲハがいた―――――

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