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CASE10 傷痕

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後ろで見ていたレオンたちもちょっと表情が険しくなったから、、


やっぱり、、気のせいじゃない…?



お腹の包帯を巻くまでは静かに治療を受けていたアゲハだったけど

先生が次に胸の傷を診ようと伸ばした手を

思いっきり叩き落とした。



「……ぁっ!、、ごめん…なさい、」


「いえ……では続きを、」


そう言って改めて伸ばした手を再び払い除けて

震えながら、先生を睨んだ。


「触るな……」


ただ一言そう言って、動きを見逃さないようにジッと睨んでいるアゲハ。


さっきまで静かに治療を受けていたのに……

今は絶対に近づけない。


そんな空気を出している。



どうしたらいいか……って、たぶん全員が思って動けなくて

しばらくしてから、アゲハが項垂れて膝を抱えて丸くなった。



「………ごめんなさい、、もう、、、」


もう……やめてって意味かな?


「でも……ちゃんと診てもらわないと、治らないよ?」


「魔法で……どうにかすれば、いい」


「魔法はリスクもあるって……だから、」


そう言ったら今度は私を睨んで……

でもすぐに、視線を反らした。


「分かってる………頭では、、」

また顔を膝にうずめて、それから絞り出すように言った。


「身体がっ……拒否する………」


治療するのを、って意味だよね?



「しばらく、、休憩しますか」


先生はそう言って少し離れた位置に椅子を置いて座った。

私じゃどうする事もできないから、しばらく見守る事にした。



「………知ってるよね、俺の核、前と違うって」


「えっ?……うん、知ってるよ」


花将軍もそう言ったし。

心臓、苦しそうじゃないし。



「話したよね?核を埋め込まれた時の話……」


「うん。覚えているよ…」


私の返事を聞いたら、膝を抱える手に力が入ったのが分かった。


またしばらく無言だったけど、ゆっくり顔をあげて胸に手を当てた。

そこは、アゲハの核のある場所。



それから、前を向いて静かに話はじめた。


「自分の身体だから分かるんだけど、これってもう俺の身体の一部なんだよ。だから、簡単に取り外せない………。
だけど、前の核は……核と皮膚の境目に、ナイフを刺して……刺した場所に指を入れて、、引き抜かれた」


………え?

引き抜く……って?


そんな事したら普通死んじゃうよね?

でも生きているから……何かカラクリがあるんだろうけど、、


「それから……繰り返した。何回も、何回もっ、、」


話を続けるアゲハを見ていたら、ボロボロと涙を流して

それでも、辛そうに話を続けた。



「核はっ、身体に、あわないと、、死ぬからっ!あうまで何回もっ、、繰り返し核を埋めては取られたっ!」


「この日まで医者に何度も、身体を調べられたっ!だからっ、だから、あの時も……意識を飛ばしてもおかしくない状況でも、、変な薬を打たれて、意識は保ったままだったっ!」


「核があえば俺は消えるっ!自分じゃなくなるっ!!」


「でもっ!身体にあわなきゃあの痛みと苦しみを延々繰り返されるっ!!」


「医者はっ、、信用できない!またっ、、またここに何かされたら………そう考えたら………」


それ以上は何も言わなくて、胸を押さえながら泣いていた。


アゲハが昨日の朝暴れたのは、その時と同じで何か薬を打たれたって、点滴と医者の姿を見て思ったのかな?


「そうか………そうだったんだね」


ドアにもたれかかりながら話を聞いていたエドガーがゆっくりとアゲハに近づいた。

アゲハのすぐ隣にいた私に退くように合図したから退いた。



「……その核が新しくなってしばらくは経っているだろう……。だが、核が変わって自我を失っていたアゲハにとったら……その恐ろしい体験は、たった二日前って感覚だよね?」


………そうだよね。

苦しみがずっと続くか自分が消えるかの二択しかなかった状況は、アゲハにとったらたった二日前。


「一度の経験がどれだけ辛く苦しいものだったかを……知らない私たちではなかったのにね。そんな思いを一人で抱えさせて、、すまなかった…」


そう言ってエドガーがアゲハの身体を抱き締めた。

アゲハはエドガーの肩に顔を埋めながら、、ずっと泣いていた。

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