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CASE10 傷痕

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「よし、寝よう?あんまり寝てないから辛いでしょ?」

私がベッドの中にもぞもぞ入り込んだけど、アゲハは動こうとしなかった。


「電気消すね?」


当たり前みたいにリモコン持って部屋の明かりを消そうとしてるけどさ

布団被りなさいよ、アゲハもさぁ。


「消すの待って。アゲハは寝ないの?」


横になって見上げると、泣きそうな顔をしていて


「寝たくても、寝れないよ………夢見るから、、怖くて、、」


「だから一緒に寝るんでしょ?怖い夢を見たら私を起こしたらいいよ。そうしたら、こっちが現実だよってずっと言うから。
熱も下がってないし怪我もしててボロボロなんだから。ちゃんと横になって安静にしなさい」


私の言葉に小さく「分かった」って言って、明かりを消してからちゃんとベッドの中に入ってきた。



暗闇に目が慣れてくるとアゲハも横向きでジッと私を見ていたからなんか変な感じで。

手を伸ばして頭をポンポン撫でて、そのまま背中に腕を回した。



「怖い夢を見たら私を起こして。約束だよ?」


「………うん、ありがとう」


アゲハの胸の辺りに私の顔があって

心臓の鼓動が聞こえる。


変に早くないし、一定のリズムで聞こえるから、、きっと今は落ち着いてるね。



「今日みたいに一人で我慢したらダメだからね?」


「………たぶんね、前より酷いよ?」



アゲハの言う前って……エドガーの隠れ家にいた時の事を指しているのかな?



「いいんじゃない?辛い、苦しい、悲しいって感情は、一人で溜め込んだら駄目なヤツだよ」


「………そういう感情が一気に溢れ出ても許してね」


「私、それくらいじゃ怒らないって……」



だけど……大丈夫かな?私。

結局疲れはとれないし寝不足だし微熱だし……。

再び寝不足だと明日、平気かな?


フラフラになってそう……。



「おやすみ」って私が言うより先にアゲハの方が寝たみたい。



心配だし、狭いし、なんか頭痛いしで

私の方が寝付けなくてしばらく起きてた。


しばらくするとアゲハの心臓の鼓動が妙に早くなって、息も荒くなって

私の背中に手を回して自分の方へ引き寄せた。


「大丈夫……?」


「おこして……ごめんね、」



力のない声で謝られたけど、そもそも寝てないからね?


「起きてたから気にしないで?それに、怖い夢を見たら起こしてって言ったでしょ?」


「うん……ごめん、、」


「ごめんよりありがとうにしてよ。落ち着いたら、また寝よう?」




それからも何度も起きたけど、騒いだり暴れたりはなかった。

だけど、何かに怯えながら何度も今いる場所や私の存在を確認していた。

「あの女が迎えに来る」「逃げられない」「戻りたくない」……って、うわ言のように言って泣いていた。



朝日が昇って部屋が明るくなりはじめた頃。

アゲハが何度目かの眠りについて、私も寝ようとしたら部屋をノックする小さな音がして、そっと扉を開ける音が聞こえた。


なんとなく……静かにドアを開けたりできるのはエドガーな気がしたけど体勢的に振り向くのは無理。


覗きこむのは分かっていたから目を開けて視線だけ天井の方を向けたら

覗きこむのはやっぱりエドガー。


「うわっ……!」


私を見て言われた言葉、この一言って……。


「……起きていたのか、ソラは」


「おはよう、エドガー………体勢的に動けないんだよ」


私は抱き枕か!?ってくらいガッチリ掴まれているからね。


スッと伸びてきたエドガーの手はアゲハのおでこを触って、それから目元を拭いていた。


「まだ熱が高いみたいだ……それに、二人共あまり眠れていないのかな?」


「そんなところ。アゲハは今さっきまた寝たよ」


「そうか……起きたら伝えないといけないね。今日は医者に診せる話」


「うん……まだ言えてない」



昨日みたいに「嫌だ」って言うだろうな……。


でも、ちゃんと治療しないと……つけたままの包帯とか衛生的にもやばそうだし。


ってかやっぱ私が伝えるんだよね?医者に診せるよって……。




駄目だ、眠くて頭、回らない……。


いい言い方が、思い付かないよ。



「ソラも少し眠りなさい。私もしばらくここにいる……。アゲハがうなされるようなら私が対処するから」


エドガーにどうこうできるのかな?って思いながら

私も何度目かの眠りについた。


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