上 下
178 / 342
CASE10 傷痕

7

しおりを挟む
「でも、、言われたくはなかったね。アゲハに……信用されていなかったのかな?って、、あの場で思ってしまったよ」


エドガーが力なくそう言って、それから誰も口を開こうとはしなかった。

あの言葉がレジスタンスのみんなに向けた言葉じゃないって、分かっている。

信用しない人たちなら、昨日助太刀するために戻って戦ったりなんて、しなかったはずだもん。


みんなが大切だから、アゲハは無理に動いた。

それも分かっているんだろうけど……言われた側のみんなはすごく辛そう。


「………色々、難しいな。だが、俺はアゲハを信用しているし、別に今の状況も迷惑とかそういう風には感じてねぇよ。アゲハの身体と心が回復して、また元気に話でもできりゃそれでいい」


「まぁ、そうだね。アゲハが戻ってきただけで、それだけで良かったんだから」


「そういう事だから……お前の出番だ」


ゼロさんの視線は私。


「この世界の人間は信じられないなら、アイツと同じ世界のお前なら、話、できるんじゃねーの?」


「そう、かなぁ……?あんなアゲハの姿、見たことがなかったから……」


「アイツがさぁ助けを求めたのもお前とエドガー。でもエドガーはこの世界の人間。ならお前しかいねーよ、アゲハをどーにかできるヤツ」


どーにかって……どうなのよ?

なかなか雑な依頼だけど、でもまぁ、アゲハを今一人にしていいとは思えない。


「分かった。もう少ししたら話してみる。今は興奮してて無理だと思うし……」



話をしているうちに外が明るくなってきて

レオンはお医者さんを家まで送るって事で出ていった。


一応、私やエドガーそれからアゲハの治療のために、午後もお医者さんが来てくれるって。

アゲハの治療…無理だと思うけど……。


でもこのお医者さんは、変な見返りはなくアゲハを診てくれる、、、らしい。


「レオンの話だと信頼できる人の紹介の医者だって。最初拒否られたらしいけど、レオンの気迫に負けて来てくれたんだってさ。
さっきのアイツを見ても午後も~なんて言うなんて……金以外にレオンは何が約束でもしたのか?って不安になるんだケド、、」


ゼロさんは怪しんでいたけど、悪い人には見えなかった……と、いうか、、

一晩中付き合ってくれたんでしょ?あのお医者さんも。


普通のお医者さんでも、そこまでしてくれないと思うけど、、、


「ちょーいい人なんじゃない?」


「前向きでいいねぇ、ソラは」


私の言葉で、エドガーがようやく笑った。

アゲハの言葉にエドガーが一番傷ついた顔をしていたから、笑った姿を見れたのは、本当に良かった。






**********





それから、熱を測ったら微熱程度まで下がっててホッとして

お腹空いてないけど朝ごはんをちょっと食べて

痛み止めをキチンと飲んでから、二階に上がった。


まぁまぁな時間は経ったけど……どうかな?

ちょっと不安な気持ちを抱きながら、アゲハの部屋をノックした。



「空だよ。入っていい?」


返事が………ない。


そっとドアノブに手をかけて開けると、ベッドの上で膝を抱えて丸くなっているアゲハがいた。


部屋はさっきのまま、ちょっと荒れている。



「入っていい?駄目なら駄目って言って?」



寝てる……っぽくはない。


でも、返事はない。



「入るからね」


そう言って一歩中に入ったけど、何も言われない。


廊下にいるゼロさんとエドガーに目配せをして、ドアを閉めた。




「話しよ?」


ベッドの横でしゃがんで声を掛けたけど、反応がない。


身体を揺すろうかな?って思って手を伸ばしたけど

さっき「触るな!」って言ってたから手を引っ込めた。



「胸、ちょっと刺したでしょ?手当てするから服脱いで?あと勝手に替えの服を漁るね?」


薬箱はこの部屋に置いたままだったちょうど良かった。


立ち上がってクローゼットから適当に服を取り出してベッドの横に戻っても、アゲハは全く動いていない。



でも、さっきと違うのは


異常なくらいに震えていたこと。



何かに怯えているみたいで放っておけなくて


私は腕を伸ばして、アゲハの身体を抱きしめた―――――
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜

代永 並木
ファンタジー
井坂蓮二、23歳 日々サービス残業を繰り返し連続出勤更新し続け精神が疲弊しても働き続ける社畜 ふと残業帰りにダンジョンと呼ばれる物を見つけた ダンジョンとは10年ほど前に突如現れた謎の迷宮、魔物と呼ばれる存在が闊歩する危険なダンジョンの内部には科学では再現不可能とされるアイテムが眠っている ダンジョンが現れた影響で人々の中に異能と呼ばれる力を得た者が現れた 夢か金か、探索者と呼ばれる人々が日々ダンジョンに挑んでいる 社畜の蓮二には関係の無い話であったが疲れ果てた蓮二は何をとち狂ったのか市販の剣(10万)を持ってダンジョンに潜り己の異能を解放する それも3等級と呼ばれる探索者の最高峰が挑む高難易度のダンジョンに 偶然危機に瀕していた探索系配信者竜胆天音を助け社畜の傍ら配信の手伝いをする事に 配信者や異能者に出会いながら探索者として活躍していく 現2章

【第1章完】異世界スカウトマン~お望みのパーティーメンバー見つけます~

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 とある異世界……時は『大勇者時代』を迎え、右も左も、石を投げれば勇者に当たるのではないかというような社会状況であった。  その時代に乗り遅れた者、タイミングや仲間に恵まれなかった者、ただ単純に勇者に向いていない者……など様々な者たちがそこかしこでひしめき合い、有象無象から抜け出す機会を伺っていた。そういった者たちが活用するのは、『スカウト』。優秀なパーティーメンバーを広い異世界のどこからか集めてきてくれる頼れる存在である。  今宵も、生きる伝説と呼ばれた凄腕のスカウトマン、『リュート』の下に依頼者がやってくる。  新感覚異世界ファンタジー、ここに開幕!

『Nightm@re』という異世界に召喚された学生達が学校間大戦とLevel上げで学校を発展させていく冒険譚。

なすか地上絵
ファンタジー
■概要 突然、『Nightm@re』という地球にそっくりな異世界に連れてこられた高校生たち。自分達の学校を自由に創り変えながら、生き残りをかけて戦う『学校間大戦』。友情あり恋愛ありのちょっぴり切ないダークファンタジー小説。※物語三章から一気にファンタジー要素が増えます。 *過去にエブリスタで書いた物語です。 *カテゴリーランキング最高3位 *HOT男性向け最高26位

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

終焉の謳い手~破壊の騎士と旋律の戦姫~

柚月 ひなた
ファンタジー
理想郷≪アルカディア≫と名付けられた世界。 世界は紛争や魔獣の出現など、多くの問題を抱え混沌としていた。 そんな世界で、破壊の力を宿す騎士ルーカスは、旋律の戦姫イリアと出会う。 彼女は歌で魔術の奇跡を体現する詠唱士≪コラール≫。過去にルーカスを絶望から救った恩人だ。 だが、再会したイリアは記憶喪失でルーカスを覚えていなかった。 原因は呪詛。記憶がない不安と呪詛に苦しむ彼女にルーカスは「この名に懸けて誓おう。君を助け、君の力になると——」と、騎士の誓いを贈り奮い立つ。 かくして、ルーカスとイリアは仲間達と共に様々な問題と陰謀に立ち向かって行くが、やがて逃れ得ぬ宿命を知り、選択を迫られる。 何を救う為、何を犠牲にするのか——。 これは剣と魔法、歌と愛で紡ぐ、終焉と救済の物語。 ダークでスイートなバトルロマンスファンタジー、開幕。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭
ファンタジー
唐津 那雪、高校生、恋愛経験は特に無し。 メガネをかけたいかにもな非モテ少女。 そんな彼女はあるところで壊れた家を見つけ、魔力を感じた事で危機を感じて急いで家に帰って行った。 家に閉じこもるもそんな那雪を襲撃する人物、そしてその男を倒しに来た男、前原 一真と共に始める戦いの日々が幕を開ける! ※本作品はノベルアップ+にて掲載している紅魚 圭の作品の中の「魔導」のタグの付いた作品の設定や人物の名前などをある程度共有していますが、作品群としては全くの別物であります。

処理中です...