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CASE10 傷痕

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ゼロさんとは、色々話をした。


ずっと謎だったギルバートさんの魔法は“時の魔法使い”で

大技であれば魔法が発動するまでに時間がかかるし、リスクも大きい。

あの戦いでは時間を戻してアゲハを助けたんだって。
だからアゲハは花将軍の傍で倒れていたのに、ギルバートさんの足元にいたらしい。


救済者の皇帝は“ゼフォン”って名前で

あの場で初見だった男の人は“ライト”って名前の“星将軍”

“星将軍”って名前なだけあって、隕石を降らせるらしい。

だから、夜だったらヤバかったって言うんだけど……


「ライトって名前で星将軍って……なんかコレジャナイ感すごい」


「アイツ……アゲハに説明した時は『光の魔法使いじゃないの!?』って言ってた」


「そう!だってライトって光って意味があるんだよ?」


「それじゃあお前はソラなのに空使えないだろ?」


「そうだけど……空使いって何!?」


ゼロさんは考えた末に「さあ?」で終わらせて

そんなくだらない話をしていたら、ゼロさんも私も自然と笑って話せるようになった。


今日、声に出して笑うって……もしかしてはじめてかも。



それから、レオンがなんでアゲハに埋め込まれた種がどういう物か分かったかっていうのも

レオンは樹木使いだから、花使いや植物使いみたいな、自分と近い魔法使いの事は分かるんだって。


色々知れたし気を紛らすことができた。





「二人共……アゲハの治療が、終わったよ」

ちょうど話が終わった頃、エドガーが静かに現れて私たちを2階に呼んだ。


部屋に入ってベッドに駆け寄ると、アゲハは寝ていて……

寝てるって言うか気を失ってる?


右腕には点滴がついてるし、手首には真っ赤な手形。

相当強く押さえつけたのかな?


……そうしなきゃ止められなかったんだろうね。


目元も泣いた痕があるし……こんなボロボロな姿、見たくはなかったよ。



レオンとエドガーは顔や腕に引っ掻かれたような傷がたくさんあって

エドガーは左腕の包帯から血が滲んでいた。


「小さい傷にはこれを……良かったら使って?」


ポケットに入ったままだったランさんから預かっている塗り薬を渡した。

エドガーはその容器に見覚えがあったみたいで、しげしげと不思議そうに眺めていた。


「珍しい……ランがこれを人に渡すなんて」

レオンとゼロさんに見せたら、二人とも驚いていた。


そんなにレアなのか……ランさんの行動が。



それも気になるけど、このお医者さん誰?とか、アゲハは大丈夫?とか

気になることだらけだよ。



「アゲハは……どうなの?」


呼吸が苦しそうだから、アゲハのおでこを触ったらかなり熱くて

まだ熱は下がりそうにない。


冷えたタオルをゼロさんがまぁまぁ雑におでこに置いたけど、アゲハは目を覚まさなかった。


「自分で切った脇腹の傷が深かった。あと胸……ってか核の周囲だな。皮膚が裂けて血は出てるし、腫れているしで……切ったらこう……膿がねぇ、、」


レオンは渋い顔をしたまま言葉を止めて

それから、点滴がついていない側の

左側の腕の内側を見せてくれた。


エドガーと戦った時にできたっぽい小さい切り傷や打撲痕以外に

たくさんの針を刺した痕が……


「これ……は?」


「変な薬、打たれてなきゃいいけどな………」


その言葉にヒヤッとして、心臓が冷たくなった気がした。

もし、日本でいう覚醒剤や麻薬みたいなのを打たれていたら?

可能性は……ゼロじゃない?

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