理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -

CASE10 傷痕

4

アゲハは何かに怯えるように目を見開いて

それからベッドから起き上がって逃げようと暴れた。



「待て！落ち着きなさい、アゲハ！！」

エドガーとレオンが止めようとしているけど

アゲハはなりふり構わず暴れて、この場から逃げようとしている……。



「おれ、に………触るなぁぁあ！！！！」


アゲハが叫んで振り上げた手は

エドガーの頬に当たって、頬から血が流れていた。



「触るなぁぁあﾞ！！！離せぇぇ！！！………やめろぉぉおお！！！」


エドガーに怪我をおわせても気づいていないくらい暴れて

聞いたことがないくらいの叫び声をあげていて


アゲハなのにアゲハじゃないみたいで


そんな姿が、怖かった。




「ゼロ！ソラ連れて下に行け！！ちょっと荒っぽくなるから見せたくねぇからさ！」



「……はぁ、分かった。行くぞ」



ゼロさんはそう言って立ち尽くしている私の腕を引っ張った。



その時に、アゲハの顔が見えたけど

恐怖に怯えているような、、そんな顔をしていた。



「やめろっ！！………助けてッ！！！あぁぁﾞあぁあﾞぁぁあ！！！」



助けてを求めるアゲハを放って置きたくなくて

この場に留まろうとした私をゼロさんは無理矢理引っ張った。



部屋のドアを閉めて、階段も半ば無理矢理引っ張るから転げ落ちるような状態で引っ張られて

ソファに向かって突き飛ばされた。




「ちょっとっ！！何するのよ！！」


そもそも私、怪我人だよ！？

背中打って痛いんだけど！！



「レオンが出てけって言っただろ？あんたがあの場にいたら邪魔なんだよ。一刻も早く立ち去るための正当な措置だ」


全然悪びれないゼロさんを睨んだけど

2階から聞こえる叫び声に立ち上がった。


ここまで聞こえる程の声量なんだよ？


アゲハに何してるの？



普通に考えたら手当てするべきで、放っておいたら死んじゃうかもしれない。


でも……あんなに暴れて嫌がっているのに……。



戻ろうとしたら肩を掴まれて

再びソファに沈められた。



「戻ったら俺たちは邪魔になるんだってば！分かれ！！」


ゼロさんは辛そうな顔をして私を叱って

床にしゃがみこんでしまった。



「レオンが言っただろ？荒っぽくなるって……その場を見たらお前はキレるか泣くか邪魔するか、、どれでもあの場にいる奴等の迷惑にしかならねーよ」


どれだけ手荒な真似を、する気なんだよ……。


「アイツに適切な処置をしようとしてるんだろ？レオンは。アイツが嫌がっても本人のためなんだって、、理解はしてる………」


それからポツリと


「俺が二人を止めようとしたのを、レオンは察したのかもしんねぇな……」



ゼロさんはそう呟いて、深いため息を吐いた。



あの場でアゲハを押さえようとしなかったゼロさんは

ゼロさんなりに葛藤していたんだ……って思ったら、私もなんか力が抜けた。



二人でしばらく呆然としていたら、2階から声が聞こえなくなった。


でも、誰も部屋から出てくる音がしないから

たぶん治療がはじまった……かな？



「ねぇ、ゼロさん」


声をかけたら顔をあげたけど

ゼロさんの表情は、だいぶ憔悴しているようだった。


「話、しよ」


「話……？」


「うん。色々聞きたい事もある」




不安な気持ちを紛らわすため


ゼロさんに提案した。