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CASE9 救済者 vs レジスタンス

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花将軍の城の前で

アゲハは上を見上げて何かを考えていた。


怖いくらい冷静だから、余計に不安。

きっと、緊張の糸が切れたら……アゲハは駄目になるんじゃないかって

花将軍だって“アゲハは壊れている”って言ったから………だから、、


「ねぇ、そら……」


「なに?」


「あとで……謝らせて?俺に、謝るチャンスを、与えてほしい」


ずっと上を見上げたままなのは

私の顔を見るのが怖いのか……な?



「謝るような事はないよ?」


私が戦いの間に飛び出したのが原因だし。

なんていうか……自業自得だよ。


「そんなことないよ………そろそろ行こう。いい風が吹いている」


風は、向かい風。

いい風……って言われたらそうかもしれない。


「しっかり捕まってね」

アゲハの服をグッと握ったら、アゲハに腰の辺りを押された。

背中を気にして腰なんだろうけど、、

これで完全に抱きついた状態。



身体……熱すぎ。

見上げると、口呼吸で苦しそう。



縛ってでも止めるべき?って思ったタイミングで

アゲハが合図して、リッシュがアゲハに向かって風を飛ばした。



「うわっ……!」

「だいじょうぶ……落ちないよ、」


アゲハが風を操って、私とアゲハは空に飛んだ。



アゲハの話だと……

建物より上に来たら、私はさらに上に飛ばされるんだよね……。


「いくよ?暴れないでね?」

「りょ、了解……」


私の返事を聞いて、アゲハは私を上空に飛ばした。


私の身体はかなり上に一気に昇った……ん、だけど、、

フワフワしたソファに座っているような、、そんな感覚。


不思議と、怖くはなかった。



その間、私より下にいたアゲハは建物に強い風をぶつけて屋根を破壊した。


破壊した屋根の下では……私の位置からは知らない人と花将軍、それからギルバートさんが見えた。



アゲハから私に頼まれた

状況を変えるかもしれない事……。



それは、私の魔法。


強いシンクロに引かれる闇の黒い球を投げ込むだけ。



新人類開発施設では、これが暴れ回ったって話だったし、アゲハも例外なく狙われた。


でも、今は

今は、アゲハ以上の新人類が、ここにいるって。


それが、アゲハが“自分以上の化け物”って呼んだ存在で………


私の黒い球が狙う人物こそ


救済者の、皇帝――――。




ソイツに向かって行けって願いながら、黒い球を出して思いっきり投げた。


勢いよく、アゲハの壊した屋根に向かって飛んでいって

たぶんアゲハも風の魔法を使ったのか、アゲハの身体が勢いよく屋内に入った。



私の身体はゆっくり下降して、流れ的に屋内に入りそうだった。

アゲハがそう計算して魔法を使ったんだけどね。





ただ、その下降中に見えた光景


アゲハが私が見た“知らない人”の傍に降りた瞬間、大鎌でその人の左腕を斬り落とした。

ボトッと腕が落ちたと同時に、私が飛ばした黒い球がその人の右胸を貫いて……黒い球は消えた。


「右足を狙え!!!そこの核を破壊すれば皇帝は死ぬ!!!!」


アゲハが叫んで

アゲハが、、刺された。


アゲハを刺したのは、花将軍―――――



「駄目よぉ、アゲハ。ゼフォンは殺させない」


アゲハは背中から右脇腹を刺されて、その場に倒れた。


花将軍が倒れているアゲハに何か耳打ちをして、それから刺した背中を…押した?



その間も私はゆっくり下降してて

アゲハが倒れているのに、私はフワリと建物内に入って立ったまま到着。


アゲハの魔法、切れなかったから……倒れているだけで意識はある?


私の登場にレオンとエドガーは驚いて止まってたけど、、二人共傷だらけ。


前を向いたらギルバートさんとゼロさんが皇帝に向かって斬りかかった。


二人を止めたのは花将軍と、もう一人、初見の男の人。


アゲハに腕を斬り落とされた皇帝は、斬り落とされた傷口を押さえながら鬼の形相でアゲハを睨み付けていた。


「この……出来損ないがッ!!!」


アゲハに向けて、剣を突きつけていた。


このままだと……殺される!!



それに気づいたエドガー、レオン、ランさん、ミオが走り出して

私も走り出そうとした。



背中痛いとかもう忘れてて

やっぱりアゲハの話に乗らなきゃ良かったって、後悔した。

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