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CASE7 急転

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ミドさんはそれから言葉を発する事はなかった。

ここの人たちは、レジスタンスに協力すると決めた人たち。

だから、レジスタンスとしての立場を、分からない訳じゃない。


でも、割り切れない思いもあるんだよね。


「話を少し戻すけど…さっきゼロが言った通り、俺は次の戦いには行かない」


「ギルくんがアゲくんいなくても平気って判断したんでしょ?」


スーは知っていたみたいで驚いていなかった。

……いつの間に知ったのか、気になるよ。

私は知らなかったのに。


「本当は俺がいた方がいいんだけどね……レオンは雪将軍と魔法の相性最悪だし、ギルの魔法はアテにしたくない。幹部で魔法が使えそうなのはゼロだけって……酷い組織だと思う」

「いいんじゃない?指揮官が優秀なら下は手足となって働くさ」


私がそう言えばアゲハはようやく表情が変わった。

少しだけ、柔らかくなった。


「ジェスより下には汚れ仕事をさせないのがレジスタンスの数少ないルール。だから、指揮官も手足のひとつにならないと手が足りないんだよ」

「汚れ仕事って……」

「人を殺す事。まぁ蟲と新人類は全員が手を下してる状態だから、汚れ仕事をさせてると言えばさせてるけどね」


そのルールは知らなかった。

まぁ知らないことの方が全てにおいて多いけど、上ばかりが辛い目にあってるとしか思えないよ。


「ソラちゃん、そんな顔しないで?あたし達みたいな一線を越えた側にならない方がいいんだから。こんな世界でも殺人は許されない行為だよ」


スーは悲しそうな顔をして言うけどさ、スーも誰かを殺した過去があるんだよね?



「だから、雪将軍を殺すのはジェスまでの誰か。魔法でとなればさらに人が絞られるから俺も行くつもりだったけど……」


そう言ってからチラッとミドさんとレオナさんを見て気まずそうに口を開いた。


「雪将軍はニャン様たちとの繋がりがある……というかコハルの姉だ。俺が殺せばここにいる人たちはどう思うか……今ですら俺がいるせいでレジスタンスへの協力に反対する人もいるんだから、どうなるかは想像に容易い」


レオナさんは険しい顔になって、ミドさんは再びアゲハを睨んだ。

二人の反応が、アゲハの言葉が真実だって言ってるみたい。


「だから、俺は外された。だけど変わりにじゃないけどやるべき事が3つある」


アゲハのやるべき事


1つ目は、光の魔法の会得

2つ目は、情報収集

3つ目は、解放した奴隷たちの支援活動



3つ目については、シンクロを教えてほしいと頼まれたり、生活が安定するまでは面倒を見たいというアゲハの思いがあるとか。


「光の魔法については、ギルたちと合流するまでの間、ゼロに教えてもらうよ。ミレイみたいな自分の力をこめた装飾品の元へ行くってヤツ、あれのが簡単らしいから1ヶ月でどうにか形にはする。そうすれば、万が一雪将軍との戦いが苦戦すれば俺が向かえるでしょ?」


「そうだけど……1ヶ月で形になるモノなの?本来は一人ひとつしか魔法の属性はないのに……」


「無理をどうにかしないと。さすがにNo.3であるならば、それ相応にならないと」


私目線ではだいぶNo.3相当に見えるけどね?

まだ足りないの……?

レジスタンスって厳しいね。

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