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CASE6 新人類開発施設

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「そうか。お疲れさん」

ゼロさんの労い方もやや雑で、それをジェスさんは嫌そうな顔で見ていた。

ゼロさんの視線の先はアゲハとスー。


あと10人くらいが待ってる。


だけど、

だけど、、、



スッと立ち上がったゼロさんはそのままスーの傍に真っ直ぐに歩いていった。


「スーが限界ってところだね……」


ジェスさんがポツリと呟いたときに、スーとゼロさんが何かを話しているのが見えた。


「絶対にいやっっっ!!!」


私のいる位置まで聞こえたスーの声。

ジェスさんも眉間にシワを寄せていた、、、


「うっ、うわぁぁぁぁあああ!!」


叫び声が聞こえて慌てて視線を声がした方に向けたら、腰を抜かして驚いている人。


傍には………人が何人も倒れていた、、、



「残念だけど……間に合わなかったようだね」

ジェスさんの言葉の意味、私にも分かった。

手を差し出されたからつかんで立ち上がって

立ち上がった瞬間眩暈がしたけど、ジェスさんが支えてくれた。

私、ボロボロだな。


「全く……これが美しい女性なら嬉しかったが、、、」


「………悪かったね。美しくなくて」



口は元気だから、大丈夫だろうね。


ノロノロとスーたちに近づくと、悔しそうにしているスーの鼻からは鼻血が出ているし、見るからにボロボロ。

アゲハも頭を押さえて痛そうにしてる……。



スーたちの傍で倒れている人は


目を見開いて倒れてる人

口を開けたままの人


10人の人が、死んでいる、、、


たぶん腕輪から、針が出たんだ。


つまり、今

花将軍は、ここの状況を知った。



「スーはよくやった。予定より10人以上も多かった。仕方ねぇよ」


ゼロさんがスーに話し掛けた瞬間、腕輪を外れた奴隷たちが近づいてきた。

明らかに殺気だってる。


それは、私たちに対する、、、殺気だ。



「ふざけるなっ!お前たちが来なければ死ななかった!」

「お前たちが俺たちの日常を破壊した!」

「あの人たちを殺したのはあなたたちよっ!!」

「私たちは別にあのままでも良かったのに!!」

言われた言葉は私の立場から見たら理不尽な言葉。

じゃあ……

じゃあさぁ!!


「だったら、奴隷のままで良かったの?いつ花将軍に殺されるか分からないまま、生きていく方が幸せだったの?」

ただ生きるだけなのに、花将軍に管理されるなんて

それが幸せなんて、思えない。




「彼らみたいに死ぬよりは奴隷のままの方がマシだっっ!」



一人が叫んだら、同調する人が多かった。



本当に……?


そうなの……かな?



「仕方ない。彼らは美しくない考えに賛同した人間だ。我らのような崇高な考えは持ち合わせていない」


「ま、そういう事だ。全員が、とは言わないが、ほとんどは“死にたくないから奴隷のままでいい”って考えだ」


ジェスさんもゼロさんも最初から分かっていたのかな?

もしかしたら、スーも。


「その考えの何が悪い!!」

憤慨してる人の方が多くて、なんか、、、複雑。


「………帰ろっか、、花将軍の奴隷に光の魔法使いはいないって情報だけど、他の将軍の奴隷にいたら今すぐ現れる可能性があ………る」


アゲハの言葉、最後が詰まって

それから顔を歪めた。



「………ふざけるな。俺は戻らない」


普段とは比べ物にならないくらい低い声で、さっきまで憤慨して騒いでいた人たちも全員が静かになった。


誰かと、テレパシーで話してるの?

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