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CASE5 武器と魔法

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想いが力になるって言っても、心配って思ってるのでは駄目だった。

もっと具体的に……かな?


シンクロを使いこなしたい。

って思いも違う……のかな?


「難しく考えないでやってみたら?今思った事とか」

アゲハにそう言われて……

思い……

想いが……

力に、なるなら……


私は、、、

……

…………

………………




突然、フワッと風が吹いた気がした。


目を瞑って真っ直ぐに立っていたのに、手の辺りに何か、、、風?

目を開けて右手を見ると小さな黒い玉があって、その玉から風が吹いてる。

え?なに、これ?


「なに、、これ?」


小さな、小さな玉なのに

徐々に大きくなっていってる……気がする?


なんか、これ、こわい。

真っ黒な玉から風が吹いてるんじゃなくて、真っ黒な玉が周りの風を吸い込んでいるんだ……!


これは、桃華とか涼くんとは違う!

だって、、、これは

分からないけど、とにかく怖い………!



「空、、、シンクロを止めて?」

アゲハの言葉、分かってる。

止めないと、、、

止めたら、消える。

止めたらいいの。

分かってる、、、けど!


「……できない、、、分からないっ!」


どんどん黒い玉は塊になって

周りにいる人が怖い顔をして見てる。


……怖い

怖い、怖い、怖い!!


無理だよ、止めるなんて無理!!


視界の端で大剣を構えたレオンが走ってくるのが見えた。

え?ウソ……

殺され……る?


「やめろ!!レオン!!」

アゲハの怒鳴り声



それから

それから……!


突然、目の前が眩しくなって

土埃も舞った。


ギュッと目を閉じたら手に衝撃と軽い痛みを感じた。

立っていられないような強い揺れもあったけど、手を強く引かれたから立っていられた。


たぶん、黒い塊は、消えた。

もういない。


自分が出したからかな?

なんとなく、分かる。


目を開けたら土埃はまだあったけど……大丈夫、目は開けられる感じ。


私の右手は、アゲハの両手に包まれていて

アゲハの両手は傷だらけになっていた。

あぁ、私の手を引っ張ったのは

やっぱりアゲハなんだね。


「……ほら、シンクロ、、、止められたね」

掛けられた声が優しくて。。。


「ごめんなさい……手も、、、シンクロも、ちゃんと使えなくて……」

「大丈夫。空が謝ることはないよ」

フワッと笑うアゲハを見て、力が抜けた。

そのまま地面にへたりこんだけど

手は、まだ放していなかった。


みんな、誰もなにも話さないし、動かない。


あ、

アゲハの手、治療しなきゃ……。

血は流れるほどじゃないけど、傷だらけだもん。


私のせい、だね。

また私、アゲハを傷つけたね。



「おい、お前ふざけてんのか?」

ズカズカと歩いてきたのはゼロさん。

めちゃめちゃ怒ってるし。


アゲハが私の手を放してゼロさんに向き合ったら、、、いきなり胸ぐらを掴まれた。


「ふざけてないよ」

「あ゛?お前がレオン止めただろ?魔法まで使ってな!」

「あのままだったらレオンが空を傷つけた」

「お前が止めたせいで何人が迷惑したんだよ!!」


二人の言い合い…全部私のせいじゃん。

私が、ちゃんとできなかったから、、、


「ちゃんと上へ衝撃が伝わらないようにしたし。レオンまでの人には話してたじゃん。俺が止めるって。邪魔してきたのはレオンとゼロの方」

「は?想定以上だったら手を出すのは当然だ」

「それが余計なんだって……いい加減手を放せよ!」


アゲハが語気を荒げたから

ゼロさんは荒っぽく手を放した。


アゲハのあぁいう態度、はじめて見た。

人にキツい言い方をする人じゃ、ないのにね。

これも、私のせい、、、なのかな?


「ごめんなさい……」


謝ることしか、私にはできなかった。


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