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CASE5 武器と魔法

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夜になってご飯を食べて。

夕飯の片付けを手伝ったりして、なんとなく笑って過ごした。

ギルバートさんたちは難しそうな顔をして集まっているから寄らないようにして、ルーラたちとこの世界の通貨の話で盛り上がった。

私たちが50円だと思ったのはエンで。

読みは同じだけどエンは全て紙幣だった。

異界の硬貨で柄や文字があって穴が開いてるもの(ようは50円玉と5円玉)はかなり高価なヤツらしく、一生遊んで暮らせる価値があるらしい。

異界のお金ってだけで稀少だって言ってたけど、異界の紙幣には価値はないらしい。

そんな感じだから、私たちが買い物で硬貨を出したから大騒ぎになって、それが巡り巡ってルーラたちの耳に入ったんだって。


「お店の人も焦るよ。大金をポンと出されたようなものだし」

「マジか!じゃあ私らちょーお金持ちになれるじゃん!」


そう言った桃華は部屋に走っていって

再びバタバタ戻ってきたときには50円玉を3枚持っていた。


「ふっふーん!穴が開いた硬貨は3枚あったよ!って事でシュナにあげる!私はこの家にお世話になるんだもんね!」

そう言って渡されたシュナは固まって、それから困った顔をしてイブキを見つめていた。


「モモカの好意だ。父さん母さんに聞いてみな」

「うん……ありがとう、モモカ」


シュナの声を今日はじめて聞いたかも。

シュナはパタパタと走っていって、それからエドガーさんとアイリーンさんが慌ててこっちに来て大騒ぎになっていた。




そんな状況を笑ってみていたけど

楽しい夜なんだけど

やっぱり私の魔法についてが忘れられなくて、心の中で引っ掛かったまま。


怖いなぁ……自分自身が。





**********






「おやすみ~。あー、、疲れたぁ………」


桃華は秒で眠りに落ちたから、相当疲れていたみたい。

私も寝よう……って一応は思ったけど考えることが多すぎて寝れる訳なくて。


今日、アゲハは夜、大丈夫なのかな?




しばらくしてからベッドを抜け出して廊下に出て


アゲハの部屋の前で立ち止まった。


話し声……が、聞こえる?

誰かいるなら、大丈夫……なのかな?


やっぱり戻ろうか、やめようか。

ドアから離れて悩んでいたら、ドアが開いた。



そして、私を見て、顔を見合わせて黙ってドアを閉めた。

部屋から出てきたのはレオンとエドガーさん。


「ソラ、どうした?こんな夜中に」


夜だから小声でレオンに聞かれたけど……言っていいのかな?

今朝の流れだと、完全に私が夜這いに来た状態じゃん、コレ。


「レオンたちこそ、どうしたの?」

質問を質問で返しちゃったけど、レオンはエドガーさんを見てエドガーさんが口を開いた。


「アゲハがうなされていたのでね。部屋に行ったら大丈夫だからと追い出されてしまったよ」


……やっぱり、夜、ダメなんだ。


困った様子の二人だから、色々と知ってるんだろうなって感じた。

心配で見に来たらうなされていたんだね。


「いつも、、、こうなの?」

「いつも何かあった後は眠れなくなる。今回は理由がありすぎているからな」


そう言ったレオンに、私の頭は撫でられた。


「傍にいてやってくれ。ソラはアゲハが唯一本音を言える相手だったって聞いていたからさ。俺らじゃダメだ」

「少し寂しい気もするけどね。昨日だってソラがいたから熟睡していたなんて、、、私たちといる時はそんな時の方が稀だったのにな」


なんで昨夜から私がアゲハの部屋にいたのかは、説明をしなくてもエドガーさんたちは分かっていたのかな?

わかっていて……あのイジリかぁ。。。


「また朝になったらからかうの?」

「それはアゲハの反応次第。今朝はまぁまぁ動揺してたから……ついな」


ニヤリと笑ったレオンがなんかムカついた。

ついじゃないよ。ついじゃ。


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