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CASE4 レジスタンス

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最後に見た時よりもちょっと雰囲気は違うけど間違いなくアゲハ。

大鎌を消して、それから私たちを睨んだ。


「なんでまたこの世界に来たんだよっ!!」


聞いたことがないくらいの大声で、怒鳴られた。

アゲハが、怒ってる。

今までアゲハに怒られた記憶はないから……なんていうかかなりショック。

あの犬(仮)にやられるかもって思った時より今の一言がショック。

だって、あんな風に怒った顔も声も知らないんだもん。


「俺がどんな気持ちでっ!三人を見送ったと思うんだよ!!なんであっちで生きててくれないんだ!!!」


「じゃあお前はお前に何も言われなかった虹野や俺らの気持ち、分かんのかよ?自分の気持ち押し付けんなよ」


辛島くんが冷静に返したらアゲハも口をつぐんだ。

まぁ、ね。そうなんだけどね。

私たちには私たちの言い分もあるんだけどね。

だけどアゲハが怒ってる事のが色々とショックで

再会を喜んでくれないのがショックで


もう私、何も言えそうにない。



「アゲハをあんまり責めないであげて。一応、かなり心配してたんだから」


私の後ろからの聞き慣れた声に振り向くと緑色の髪の女の子。

最後に見た時より、髪が伸びたルーラが困った顔して立っていた。


「久しぶり、ソラ!再会を喜びたい所だけど……あっ!アゲハ!!」


ルーラが走り出した先ではアゲハが胸を押さえてうずくまっていた。

え?なに?どういう事?



「だから言ったのにっ!」

ルーラが心配そうにアゲハを覗きこんだけど、アゲハは遠目から見ても呼吸がおかしいのは分かる。

身体……の、発作?

その時に、よく似てるから……。


「だい、っじょう、ぶ。ミレイが、くる、から」


右手で胸を押さえながらも左手で砂を握って耐えてるみたい。

左手の薬指には指輪があって、それがチカッと光った。


眩しい光で前が見えなくなった直後、アゲハの前には綺麗なお姉さん。

オレンジ色の髪で胸をめっちゃ強調した服を着て、スリットががっつり入ったスカートを履いてた。

耳はやっぱり尖っているからこの世界の人。


「バカッ!!なんで勝手な真似したの!?あと4日待てば良かったのに!!」

そう言って泣きながらアゲハの右手に自分の手を重ねた。

「まて、ない、でしょ?ルーラ、せめないでね?」

「は?ルーラだけじゃなくて全員許せないし。アゲハに何かあれば私生きていけないんだからね!!!」

「おー、げさ。………少し、楽になれたよ、ありがとう」


恋人のやり取りを見ているのかな?

そんな感じがしてならないんだけど…。


アゲハがこの世界に馴染んでるようで安心したような、モヤモヤするような、、、

あれ?なんでモヤモヤ?

知らない人になっちゃったみたいだからかな?


アゲハが言った通りなのか、呼吸が元に戻ったみたいでスッと立ち上がった。

だけど、顔色は劇的に悪い。


「全員、連れて帰る」

「は?嫌よ。アゲハを苦しめる奴なんて死ねばいい」


お姉さんには清々しいくらい嫌われてる模様。

睨みで殺す気なんじゃないか?ってくらい怖い顔して睨まれてるし……。


「ミレイ、全員連れていかないとまたアゲハは勝手に出ていくよ?」

「~~ッ!!分かったわよっ!!」


お姉さんがそう言った直後、また眩しい光がして、それが私たちまで包み込んだ。




**********





目を開けたら見たことがある土の壁。


「お帰り、相棒」


私たち全員の目の前にはずいぶん大きな金髪のお兄さん。


「ただいま、レオン。ごめん、文句は後で聞くから……ちょっと、もう、限界」


相棒って呼んだ相手はアゲハみたいで……だけどアゲハはやっぱり胸を押さえて辛そうで

お姉さんに付き添われてその場からすぐにいなくなった。


「さぁて……ゆっくり話もしたいけどアイツの様子も気になるし……。レオナさん、ソラとモモカとリョウに部屋と飯と風呂の準備でもしてやってくれ!話はそれからだ!」

「私の名前!なんでぇ??」


桃華が驚いて声をあげたけど、お兄さんはニヤリと笑っただけだった。

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