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CASE3 帰還
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「いきなり集まってもらってごめん」
待ち合わせの公園には桃華と辛島くん。
待ってる間、夜の公園はちょっと怖かった。
「どーしたの?今日はデートじゃなかったの?」
タイヨウさんに会うって話してた桃華はブランコを漕ぎながらさらりと言った。
「は?デート?」
もちろん、知らない辛島くんは反応して。
「ただ遊んだだけだよ。幼馴染みだから、タイヨウさんも」
「幼馴染みってことは井黒の兄弟?」
「うん。お兄さん」
「ふぅん」って言って顔をそらしたから辛島くんの興味はなくなったみたい。
息を吸って、吐いて。
空を見上げて、口を開く。
「私、ユートピアに行く」
二人はしばらく黙ってたから顔を向けたら、二人で顔を見合わせていた。
「理由は?やっぱり井黒くん?」
「うん。アゲハがいない世界はつまらない」
「戻っても……次にこっちに帰ってこれる保証はないぜ?あのゲートがなくなってたらさぁ」
うん、そうだね。
何度も行き来できるとは思えない。
だけどね、
「小さい頃は同じ歩幅だったのに、いつの間にか歩幅がバラバラになっちゃって、置いていかれちゃった。だから、私がアゲハに追い付くの。帰れなくてもいい」
二人はまた黙っちゃったけど、それで良かった。
行き方は、たぶん分かる。
前に白い紙を使ってまたユートピアに行こうとしたけど行けなかった。
私には手元に名前入りのカードが残ってる。
つまり、そのカードでならまた行けるってことでしょ?
「二人には、私がいなくなったらユートピアにいるって事を知っててほしかったの」
「……うん、よし!じゃあ私も行く!」
桃華が勢いよくブランコから降りた。
いや、待って?
話聞いてた?
ユートピアだよ?蟲とかいたし、救済者と破壊者が戦ってて、どっちが勝っても生きるの辛い世界だよ?
帰れないかもしれないんだよ?
「空が行くなら私も行く!………ってのは半分冗談で、やっぱり私も井黒くん気になるから元の生活って厳しいし。空が元気ないのも辛いし」
「蟲とか襲われて死ぬかもなんだよ?遊びに行くような場所じゃないよ!?」
「だって空……シンクロ全然使えないじゃん。一人で行ったら死ぬよ」
ジロッとした目でこっち見てる。
否定ができなくて顔を背けちゃった。
「まー、俺もだな。向こうのが楽しそうだし」
「た…楽しそう?」
辛島くんはニヤリと笑ってたけど……この二人、本気で?
「魔法とかもっと使ってみてーじゃん!こっちじゃシンクロ使えないし」
え?理由はそれだけ?
「空がユートピアに行くって言い出したらどうするか。私と辛島くんでずっと前から決めてたんだよ」
桃華はそう言ってポケットからカードを取り出した。
………やっぱりそれだけが理由じゃなかったんだね。
「明日、行きますか!」
桃華がそう言って私たちを見渡した。
私は笑顔でうなずいた。
本当は、もっと早く、決断してたら良かったのかな?
二人の気持ち、本当に嬉しかったよ。
たぶん、帰ってきてから一番普通の、一番の笑顔ができたと思う。
待ち合わせの公園には桃華と辛島くん。
待ってる間、夜の公園はちょっと怖かった。
「どーしたの?今日はデートじゃなかったの?」
タイヨウさんに会うって話してた桃華はブランコを漕ぎながらさらりと言った。
「は?デート?」
もちろん、知らない辛島くんは反応して。
「ただ遊んだだけだよ。幼馴染みだから、タイヨウさんも」
「幼馴染みってことは井黒の兄弟?」
「うん。お兄さん」
「ふぅん」って言って顔をそらしたから辛島くんの興味はなくなったみたい。
息を吸って、吐いて。
空を見上げて、口を開く。
「私、ユートピアに行く」
二人はしばらく黙ってたから顔を向けたら、二人で顔を見合わせていた。
「理由は?やっぱり井黒くん?」
「うん。アゲハがいない世界はつまらない」
「戻っても……次にこっちに帰ってこれる保証はないぜ?あのゲートがなくなってたらさぁ」
うん、そうだね。
何度も行き来できるとは思えない。
だけどね、
「小さい頃は同じ歩幅だったのに、いつの間にか歩幅がバラバラになっちゃって、置いていかれちゃった。だから、私がアゲハに追い付くの。帰れなくてもいい」
二人はまた黙っちゃったけど、それで良かった。
行き方は、たぶん分かる。
前に白い紙を使ってまたユートピアに行こうとしたけど行けなかった。
私には手元に名前入りのカードが残ってる。
つまり、そのカードでならまた行けるってことでしょ?
「二人には、私がいなくなったらユートピアにいるって事を知っててほしかったの」
「……うん、よし!じゃあ私も行く!」
桃華が勢いよくブランコから降りた。
いや、待って?
話聞いてた?
ユートピアだよ?蟲とかいたし、救済者と破壊者が戦ってて、どっちが勝っても生きるの辛い世界だよ?
帰れないかもしれないんだよ?
「空が行くなら私も行く!………ってのは半分冗談で、やっぱり私も井黒くん気になるから元の生活って厳しいし。空が元気ないのも辛いし」
「蟲とか襲われて死ぬかもなんだよ?遊びに行くような場所じゃないよ!?」
「だって空……シンクロ全然使えないじゃん。一人で行ったら死ぬよ」
ジロッとした目でこっち見てる。
否定ができなくて顔を背けちゃった。
「まー、俺もだな。向こうのが楽しそうだし」
「た…楽しそう?」
辛島くんはニヤリと笑ってたけど……この二人、本気で?
「魔法とかもっと使ってみてーじゃん!こっちじゃシンクロ使えないし」
え?理由はそれだけ?
「空がユートピアに行くって言い出したらどうするか。私と辛島くんでずっと前から決めてたんだよ」
桃華はそう言ってポケットからカードを取り出した。
………やっぱりそれだけが理由じゃなかったんだね。
「明日、行きますか!」
桃華がそう言って私たちを見渡した。
私は笑顔でうなずいた。
本当は、もっと早く、決断してたら良かったのかな?
二人の気持ち、本当に嬉しかったよ。
たぶん、帰ってきてから一番普通の、一番の笑顔ができたと思う。
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