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CASE3 帰還

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「モテる人気者は大変だね!」

「ちょー他人事っぽい言い方!」

「だって私はモテないもーん!」


お昼休み

さすがに午前中である程度の人と言葉を交わしたら静かになった。

ようやく桃華と二人で話せる。


「なんか、本当に夢だったんじゃないかって思うね」

「うん……私はこっちのが夢っぽい」


だってこっちは、アゲハがいない世界なんだもん。

あっちには、いたのにね。


「そうそう、合コンの話あるけど空は行く?」

「絶対に行かない」

「いいよなぁー、空は合コン行かなくても彼氏がいつの間にかいてさぁ」

「来るもの拒まずだからじゃない?」

「いやいや?空の歴代彼氏はみんなイケメンだったよ?選んでるって絶対に!」


桃華との会話が今まで通りすぎて。

私もスラスラ喋れるけど心はどっかにいっちゃった感じ。

私は、こんな普通を謳歌してていいの?

いいん………だよね?






**********




たぶん、ユートピアでの1ヶ月はこっちの1週間。

だから、最初にアゲハがユートピアに行ってから出会うまでこっち時間の1ヶ月+私がユートピアにいた間の1ヶ月ちょっと……。


つまり、アゲハはこっち時間で5ヶ月くらいはユートピアにいて、それからユートピアで再会した。


そして私がこっちに帰ってきて2週間。

アゲハはこっち時間で7ヶ月、ユートピアにいる事になる。




戻ってきてからはずっとそんな日々。

桃華の前では今まで通りを演じてるけど、一人になるとユートピアについてばかり調べている。


だけど、何にも分かるわけない。


都市伝説が出回ってる以上、ユートピアから帰ってきた人がいて、その人が拡散した情報なんだろうって推測はできるけど。

ただの高校生の私が情報の出所にたどり着ける訳ないし。


またユートピアに行く方法って調べても出てこないし。


試しにユートピアに行った方法でまた行けるかやったけど、行けなかったし。


そもそも、また行ってどうする?って感じだけどさ、ふとやってしまったんだよね。いけなかったけど。



こっちに戻ってきたのに何も面白くない。

球技大会は桃華と勝ちまくって優勝したし、勉強もなんとかついていけたけど、何も感じない。



だけど、どうしたらいい?

どうしたら、全て忘れて楽しめるの?





私が戻ってきて3週間が過ぎた頃、タイヨウさんから遊びに誘われた。

気分が乗らなくて適当な理由をつけて断り続けるのも悪くて、2週間後に遊ぶ約束となった。


「空には元気でいてほしいからな。おばさんに聞いたぞ?最近は部屋から出てこないって」

「私いま思春期なの。難しいお年頃」

「ほぉー。じゃあそんな空も楽しめる場所に行きますか」


タイヨウさんはどこに行くか教えてくれなかったけど、色々考えてくれるらしい。

私は昔、タイヨウさんが好きだった。

だから、昔の私だったら、本当に嬉しかったんだろうなぁ。


今は、ごめん。

完全に楽しめそうにない。



「楽しみにしてますねっ!お財布は置いていきますから!」

「完全にタカる気じゃん!」



顔は笑って、心は笑ってない。

タイヨウさん、ごめんね。

心配してくれてるのに、本当にごめん。


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