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CASE3 帰還

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「これが、ゲート?」


翌日、ニャンさんの魔法で連れてこられた先は洞窟っぽい場所。

ゴツゴツした岩の中でひとつだけ、カードをスライドさせる端末みたいな岩があった。


「どー見たって不自然だな」

「だから、やっぱコレ?」

「じゃあ辛島からやってみて」


アゲハにそう言われて「命令すんじゃねーよ」って言いながらも辛島くんがカードを取り出した。

別にゲートじゃなかったらスライドさせても何も起きるわけないし。

辛島くんがカードをスライドさせたら、少しして身体が光だした。

「え?はぁ!?なんだコレ!?」

辛島くんは驚いているけど、これってこの世界に来た時と同じ。

身体が、光って、それから……―――――。


眩しさに目を閉じて、光が収まってから目を開けたら辛島くんがいなかった。



「これだけで、戻れるんだ……」


桃華が呟いて、カードをスライドさせた。

桃華の身体が光だした瞬間こっちを振り向いた。

満面の笑みで。


「ニャンさん、本当にありがとう!!みんなによろしくねっ!!空と井黒くんはまた後で~!!」


桃華らしく手をブンブン振りながら眩しい光に包まれて消えた。


「空から先にどうぞ」

アゲハはすごく落ち着いた様子だった。

帰れるのにテンション上がんないの?

って感じだけど、私は帰れるって気持ちでいっぱいだった。


 「ニャンさん、本当にお世話になりました」

「いえいえ、達者でな。もうこの世界には来るんじゃないよ」


ニャンさんは目を細めてそう言ってくれた。

やっぱり、この世界の人から見ても異界人は関わらない方がいいと思う世界なんだ。



カードを持ってスライドさせる。

それだけで、帰れる。


異世界に来て怖い思いもした。優しい人にも出会えた。

元の世界に戻ったら、全て夢だったって思うようにしよう。




カードをスライドさせようとした瞬間

私の手を掴まれた。

振り向くとアゲハで。

寂しそうな、泣きそうな顔で私の顔を見ていた。


「空……来てくれてありがとう。本当に、本当に、嬉しかった。みんなにもそう伝えて」


なに、言ってるの?

まるでこれが別れみたいじゃん。


「約束は守ってね。みんなが帰ったと分かればこのゲートはたぶん壊される。だから、二度目はない」


「アゲハ……帰るよね?一緒に……」


「俺は……」


そう言った瞬間

アゲハが私のカードをスライドさせた。


「俺は、帰らない。ここでお別れだよ、空」


「アゲハ!何でっ!!?」


アゲハの腕を掴んだら時に、私の身体が光だした。


【 ニンショウシマシタ ニジノ ソラ 】


あの時と同じ声がした。


アゲハが帰らない?

そんなの嫌。

なんのために私たちがここに来たの?

なんで、アゲハは?……何でなの!?


「バイバイ、空…」

「アゲハ!!一緒に…!!!」


最後に見えたのはニャンさんの辛そうな顔とアゲハの無理矢理笑ったような顔。



来たときと同じ、落ちるような感覚がして


意識は、途切れた……―――――。








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