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CASE2 同調-シンクロ-

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「一人になりたい」


アゲハがそう言って、ニャンさんたちも席を外してくれたから私たちも部屋から出ることになった。

一緒にいたらダメ?って聞いたけど、一人になりたいの一点張りだったから。


泣きたいときに一人になりたがるから

たぶん、そういう事。


「……どうした、虹野?」


みんなが別の部屋に移動してるのに私だけ部屋の前で動かないから辛島くんが気づいてくれて。

静かにのポーズをしたらそっと近くに来た。


ドアからは、アゲハのすすり泣く声が聞こえた。



「私はここに残るよ。アゲハを放っておけないし」

「普段ならずいぶん過保護だなって言うけど……」


辛島くんが口ごもるのは、やっぱり負い目があるからなのかな?


「人が一人になりたがる時は、本当は誰かに傍にいて欲しいときなんだと思うから」


「そうかもしれねーな」


辛島くんはそう言ってから桃華たちの方へ歩いて行った。

私はそのままドアに寄りかかりながらズルズルと滑るようにして座り込んだ。


あの羽の模様、消せないのかな?

核があるまま日本に戻ったら、アゲハは大丈夫なのかな?

そもそも、日本への戻り方は?


……なんて、私ひとりで考えても仕方ないけどさ。


アゲハから聞いた話は、想像より重たかった。

淡々と話してたけど、そんな軽い話じゃなかった。

だから、アゲハに頼らずに、一緒に帰りたいなって思う。




「空、そこにいるでしょ?」


不意に聞こえたアゲハの声。

いつも通り。たぶんもう泣いてない。


「いるよ」

「無理言ってごめん。もう大丈夫」


「じゃあ入っていい?」

そう言いながらドアを開けた。


「いいよってまだ言ってないけど?」

私の行動は予想してたと思う。

クスクス笑いながら私を見ていた。




「ダメだー、貧血っぽい」

「うん、血は戻せてないからね。頑張って作って」

「頑張ってって雑な言い方……あ、そういえば空もシンクロが使えたね」

「あの風?」

「うん、ただ空は風使いっぽくなかったなぁ……衝撃波みたいな風だったから」

「アゲハも風使ってたよね?」

「風と土なら使えるねー。本当は土使いなんだけど、、、やっぱ核でブーストされてるからみんなができないことができちゃうんだよね」

「ちょー万能じゃん」

「この世界でなら空よりも強いもんねー」


二人でずっと他愛ない話をした。

そういえば最近、二人で話ってあんまりしてなかった気がする。

私が、友達とか彼氏(今はいないケド)とかを優先してたから。


「あと、謝らなきゃね。ちゃんと」

「謝る?」

「ここの人たちに。襲ったんでしょ、俺が」

「みんなを呼ぼうか?」

「んー、もう少しだけ、待って。怖いから」


アゲハの表情とは違って手が震えていたから。

何を言われるのか、何をしたのか。

全部を知るのは怖いんだよね。




「ソラ、良いかな?」

ドアを開けて入ってきたのはニャンさん。

とことこと歩いてきてアゲハの方をじっと見た。

「この者の記憶を見て、皆に伝える。そうすれば先程の話の真偽も分かるからのぅ。どうかな?」


そんなに簡単に記憶って見えるものなの!?


「時の魔法使い……」

アゲハは時の魔法使いってヤツを知っていたのかそう呟いて、ニャンさんが頷いた。

「ワシらとてお主が望んでやった行動だと、今の様子を見て思う者はおらぬ。だが、やはり本心を知りたい。そう思う者が多々おる訳じゃ」

「構いません。それで何かが伝わるなら」

「ありがとう……それじゃあ……」


ニャンさんの指先がボゥっと光ってそのままアゲハの額に触れた。

アゲハはニャンさんを見ていたけど、ニャンさんはどんどん表情が険しくなっていった。


「もうこれ以上は……見たくない……」


ニャンさんがそう言って手を引っ込めたから……そんなに見たくない程の事なの?

ニャンさんの様子をアゲハも困り顔で見てて、ニャンさんは深呼吸をしてからアゲハに向き合った。


「お主の行った行為は許されぬものだが……お主が望んだいた訳でもないし、抗っていた事も分かった……辛い、などという言葉では表せぬ体験だったなぁ……」


ニャンさんはクルリと踵を返して背を向けた。


「皆に伝えて来よう……お主は、アゲハには、罪はない……と」


アゲハと私はお互いに顔を見合わせた。

ニャンさんはそのまま部屋を出て行って、しばらく私は何も言えないでいた。

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